専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外テニス

【レジェンドの素顔7】「氷山の女」と呼ばれたコート上とは対照に、情熱的なクリス・エバートの私生活|前編<SMASH>

立原修造

2021.05.01

クリスの初恋はジミー・コナーズであり、ふたりはどうやら奇妙な縁で結ばれていた。写真:THE DIGEST写真部

クリスの初恋はジミー・コナーズであり、ふたりはどうやら奇妙な縁で結ばれていた。写真:THE DIGEST写真部

“婚約カップルが世紀の優勝”

 よく知られているように、クリスの初恋の相手はジミー・コナーズである。この二人は実に奇妙な縁で結ばれていた。それは二人が生まれるずっと前までさかのぼる。

 クリスの父親ジミーは若い頃、コナーズの母親グロリアとデートしたことがあるのだ。二人はシカゴの同じテニスクラブで、一緒に練習をする間柄だった。そのまま二人が結婚していれば、クリスとコナーズは兄妹になっていたわけだ。しかし、結婚まで至らず、お互いに別な伴侶を見つけた。

 その後、奇しくも二人はフロリダに移り住むことになった。まったくの偶然である。そして、お互いに子どものテニスに付き添っている時、二人は再会することとなった。その話を父親から聞かされたクリスは、昔の愛が再燃しやしないかとヒヤヒヤしたという。

 その日、クリスが試合を終えて家へ帰ろうとすると、父親が、コナーズ母子を自分たちの車に乗せてあげた。これが二人の最初の出会いである。コナーズ13歳、クリス10歳。二人は、まだ幼すぎた。その頃は二人ともテニスに夢中だったし、他のことに気を配る余裕さえなかった。クリスは、となりにすわった少年がやせっぽちで、落ちつきがなかったことをうっすらと覚えていた。
 
 5年後、二人はあるテニスクラブで再会した。ともに、ジュニアのトップ・プレーヤーになっていた。この時、コナーズはブライアン・ゴットフリードと18歳以下のナショナル・チャンピオンシップ準決勝を戦い終わったところだった。勝ったのはゴットフリードの方。クリスはゴットフリードとは顔なじみだったが、そばにいたコナーズのことはうっかり忘れていた。

「あなたが勝ってうれしいわ」
 クリスはゴットフリードに祝福を述べた。すると、コナーズが不機嫌な顔を見せた。クリスはとっさに「いけない」と思った。ゴットフリードと並んでいるのは、5年前に父親の車に乗り合わせた少年その人であることに気がついたのである。

「本当にごめんなさい。悪気はなかったの」
 クリスは、必死になって謝罪した。顔をほんのりと赤らめながら――。コナーズは、5年前とは見違えるほど、魅力的になっていたのである。

 それ以来、クリスはコナーズに夢中になってしまった。大きな大会に出始めた二人は、試合会場でちょくちょく会うようになっていた。コナーズの方からもデートによく誘ってくれた。

 クリスは小さい頃から外向的な人間に魅力を感じていた。そういう男性は、彼女の明るい性格を十分に引き出してくれるからだ。そういう意味では、コナーズは申し分なかった。当時のコナーズは粗野な男と一般に思われていたが、クリスはそう思わなかった。二人だけでいる時の彼は穏やかな紳士で、やさしかった。
 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号