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海外テニス

【レジェンドの素顔6】クリス・エバートをチャンピオンへと導いた2つの幸運|前編<SMASH>

立原修造

2021.04.07

1986年フレンチオープン決勝戦でクリス・エバートはマルチナ・ナブラチロワを破った。写真:THE DIGEST写真部

1986年フレンチオープン決勝戦でクリス・エバートはマルチナ・ナブラチロワを破った。写真:THE DIGEST写真部

 大一番におけるスーパースターたちの大胆さや小心をのぞいていくシリーズ「レジェンドの素顔」。今回は元祖美少女テニス選手のクリス・エバートを取り上げよう。

 1986年もフレンチ・オープンを制して、13年連続してグランドスラム大会に優勝したクリス・エバート。10年以上にわたって世界のトップに位置したことは驚異ですらある。彼女の強さの秘密は一体どこにあるのだろうか。そこには生まれ育った環境が大きく左右しているのではないだろうか。エバート家の歴史をたどりながら、クリスの少女時代を追ってみよう。

   ◆   ◆   ◆

彼女は二つの幸運に恵まれた

 “人間の一生を支配するものは運であって、知恵ではない“と言ったのはキケロだったが、先人の言ったように、クリス・エバートのテニス人生も、まさに幸運によって、導かれてきたといえるだろう。少なくとも、彼女は二つの幸運に恵まれた。

 一つは、温暖な気候のフロリダに生まれたことだ。一年を通して、テニスができる恵まれた土地が、練習好きなクリスにとても幸いした。
 
 ところで、アメリカの女子テニス界には奇妙なジンクスがあった。カリフォルニア出身でないとチャンピオンになれないというのだ。そういえば、1970年以前、アメリカが生んだ世界的な女子プレーヤーは例外なくカリフォルニアの出身で占められていた。

 ウインブルドンを8度も制したヘレン・ウイルズ、女子で最初のグランドスラマーとなったモーリン・コノリー、全米で4連覇したヘレン・ジェイコブス、そしてビリー・ジーン・キング。彼女たちはすべて、カリフォルニアの太陽の下で、一年中プレーに打ちこめたことが飛躍のきっかけとなった。

 そのジンクスを初めて破ったのがクリスである。クリスとて、カリフォルニアと同じように気候がテニス向きのフロリダで生まれたことが大成につながった。そのため、クリスは少女時代、気候のことなど心配したことがなかった。冬になると避寒のために全米各地から大勢の人が訪れるくらいだから当たり前である。
 
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