しかし、現実は予想した以上にドラマティックだ。その夜遅く、バートからクリスに電話がかかってきた。二人はすぐに意気投合した。その証拠に二人は、電話で早速、ニューヨークのゴミ処理問題についてユーモアたっぷりに論じ合った。いきなりそんな話題を話し合えるカップルなどそうはいない。
忙しい二人ではあったが、その後、機会を見つけてはデートを重ねるようになった。クリスはバートの人柄にすっかり惚れこんでしまった。バートはスクリーン上で度々演じる荒々しい男ではなく、とてももの静かで恥ずかしがり屋だった。できることなら、一生彼のそばにいたいとさえ思った。
しかし、それは到底かなわぬことだった。バートとクリスはあまりに住む世界が違っていた。バートにはバートの、クリスにはクリスの実績というものがあった。お互いに、それを投げ出してくれとは言えるはずがなかった。コナーズのときは、その辺のケジメがわからず失敗した。同じ失敗を二度とくり返したくないとクリスは考えていた。
“妥協”という言葉とは無縁
一人の男性に出会うことによって、これまでの価値観が一変するということは、女性にとってはよくあることだ。もちろん、男性についても言えるのだが―――。
クリスは自分がトップ・プレーヤーである間は、結婚はむずかしいと考えていた。コナーズやバートのことが心に引っかかっていたのだ。ところが、そうした考えを根底から覆してくれる男性と、とうとうめぐり会えた。もちろん、ジョン・ロイドのことである。二人は心に同じ傷を持っていた。というのはジョンも19歳のときスウェーデンのプレーヤーと婚約したことがあったのだ。
「ああいった突っ走りは、若いときに誰もが体験することの一つなんだ。あのまま結婚していたら、おそらく半年ももたなかっただろうね」
ジョンはそう言ってニッコリ笑った。クリスは、今まで接したことのないタイプの男性と知り合って、眼が開かれたような感じがした。ジョンのそばにいるとホッとするのだ。そうした安らぎの時間は彼女にとって貴重だった。
忙しい二人ではあったが、その後、機会を見つけてはデートを重ねるようになった。クリスはバートの人柄にすっかり惚れこんでしまった。バートはスクリーン上で度々演じる荒々しい男ではなく、とてももの静かで恥ずかしがり屋だった。できることなら、一生彼のそばにいたいとさえ思った。
しかし、それは到底かなわぬことだった。バートとクリスはあまりに住む世界が違っていた。バートにはバートの、クリスにはクリスの実績というものがあった。お互いに、それを投げ出してくれとは言えるはずがなかった。コナーズのときは、その辺のケジメがわからず失敗した。同じ失敗を二度とくり返したくないとクリスは考えていた。
“妥協”という言葉とは無縁
一人の男性に出会うことによって、これまでの価値観が一変するということは、女性にとってはよくあることだ。もちろん、男性についても言えるのだが―――。
クリスは自分がトップ・プレーヤーである間は、結婚はむずかしいと考えていた。コナーズやバートのことが心に引っかかっていたのだ。ところが、そうした考えを根底から覆してくれる男性と、とうとうめぐり会えた。もちろん、ジョン・ロイドのことである。二人は心に同じ傷を持っていた。というのはジョンも19歳のときスウェーデンのプレーヤーと婚約したことがあったのだ。
「ああいった突っ走りは、若いときに誰もが体験することの一つなんだ。あのまま結婚していたら、おそらく半年ももたなかっただろうね」
ジョンはそう言ってニッコリ笑った。クリスは、今まで接したことのないタイプの男性と知り合って、眼が開かれたような感じがした。ジョンのそばにいるとホッとするのだ。そうした安らぎの時間は彼女にとって貴重だった。