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国内テニス

「グランドスラム優勝と世界一」の夢はずっと変わらない。19歳の新鋭プロ、佐藤久真莉が持つ可能性<SMASH>

内田暁

2021.05.18

昨年の全日本選手権では世界71位の日比野菜緒と4-6、6-3、3-6の接戦を演じた佐藤(写真左:THE DIGEST写真部)。この5月にはカンガルーカップで元気な姿を見せてくれた(写真右:内田暁)

昨年の全日本選手権では世界71位の日比野菜緒と4-6、6-3、3-6の接戦を演じた佐藤(写真左:THE DIGEST写真部)。この5月にはカンガルーカップで元気な姿を見せてくれた(写真右:内田暁)

 その「心」が再び真っすぐテニスに向き始めたのは、プロ転向を決めた17歳の時だったという。

 テニスが職業になる。スポンサーなど支えてくれる人たちもたくさんいる。その自覚が、「普段の練習から私生活も含め、しっかりしないと」と気持ちを引き締める契機となった。「テニスとも、自分自身とも向き合う」ようになり、戦術面やフィジカルの強化にも意識的に取り組む。

 新型コロナの感染拡大でツアーが中断した時も、「自分のテニスを磨く良いチャンスかなと思った。気持ち的に下がらず練習できた」のだと言った。

 実際にコロナ過に入った頃から、佐藤は元デ杯代表の近藤大生をコーチに招き、指導を仰ぐようになる。サーブ&ボレーを得手とした天才肌の近藤は、佐藤に技術面だけでなく、試合の局面や状況に応じた考え方やプレーの選択肢を教えていった。

「欲しいポイントで気持ちが引いてしまうのが課題だった」という佐藤は、今は「大事なところで攻撃的な姿勢を見せ、ボレーで決めることを目指しています」という。また、それら試合で心掛けることや相手の特徴などをノートに記し、試合中に見ることも始めてみた。
 
 その成果が顕著に表れたのが、昨年の全日本選手権のベスト4進出。そして敗れはしたが、日比野菜緒を追い詰めた準決勝の一戦だ。

「プレッシャーのない中で日比野さんに向かっていけました。内容的には一番良い試合だった」

 その心身の記憶を、己を信じる根拠としつつ、「では、自分がプレッシャーを感じる中で何ができるか」を今の彼女は模索している。

 先の5月上旬。佐藤は岐阜開催のカンガルーカップに出場し、国内大会ではあるものの、久々に公式戦の緊張感を味わった。

 結果は2回戦で惜敗するも、「試合をやって新たな課題が見つかって、それをコーチと話し合うのが、懐かしい感じです」と、言葉に充実感をにじませる。そろそろ、海外のITF大会にも出ていく予定だ。

 今年の目標を「300位以内」に掲げる彼女に、「最終的なゴール」を聞いてみた。

 返ってきた答えは、ヒンギスとボールを打った11歳の頃に見た夢と同じ――「グランドスラム優勝と、世界一」だった。

取材・文●内田暁

【PHOTO】佐藤久真莉ら日本選手が躍動。2020全日本選手権の厳選プレー集
 

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