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海外テニス

身長差38センチのイズナーに対し、西岡良仁が実行した「このサーフェスで彼に勝つ唯一の方法」<SMASH>

内田暁

2021.07.01

その身長差38センチ。様々なハンディを、西岡らしい分析力とここ一番の集中力で覆してみせた。(C)Getty Images

その身長差38センチ。様々なハンディを、西岡らしい分析力とここ一番の集中力で覆してみせた。(C)Getty Images

 キープ合戦となった第1セットは、タイブレークの末に西岡が奪った。第2セットはブレークを許し落とすも、第3セットは少ないチャンスをものにし奪い返す。第4セットもタイブレークにもつれ込み、この時は、終盤に勝負を掛けてネットに出た相手に軍配があがった。

 そして突入した、かつてイズナーが永遠に戦い続けた、ファイナルセット――。

 サーブで先行する西岡は、まずは自身のゲームキープに専念する。落とせないという息苦しさは覚えたが、同時に、「相手がプレッシャーを感じているのもわかっていた」。

 互いにキープし、ゲームカウント5-4で迎えた、第10ゲーム。ここを勝負どころと見た西岡は、集中力を一層研ぎ澄まし、自慢のフットワークの走力を一段階引き上げる。
 
 ネット際の攻防となったゲームポイントの局面では、決まったと思われたボレーに背走し追いつくと、振り向きざまにパッシングショットを決め、この日最大の歓声を引き出した。両手を振り上げ、さらに声援をあおり自らを盛り上げた西岡は、その後も相手の足元にボールを沈め、疲れの見えるイズナーのボレーミスを誘っていく。

 試合開始から、3時間18分。

 イズナーのボレーに快足を飛ばし追いついた西岡は、相手の動きを見極めて、コンパクトなスイングでバックを鋭く振り抜いた。打球はイズナーの脇を抜け、白いラインの内側で、緑の芝の上を跳ねる。次の瞬間、天に突き上げた西岡の手に弾き飛ばされ、キャップがふわりとコートに落ちた。

 総獲得ポイントは、155対151でイズナーが上回る。サービスエースの数は、イズナーが36で、西岡は3。ただ、エラーで相手に与えたポイントは、イズナーが70を数えたのに対し、西岡は僅かに18にとどまっている。

 コートを駆けた総距離は、イズナーの6193メートルを、西岡は大きく上回り7179メートル。

「危ないゲームも多かったですが、耐え続けたのが勝因だったと思います」

 試合後の勝者は、言葉に静かな矜持を込めた。

現地取材・文●内田暁

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