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海外テニス

WTAファイナル初白星の大坂なおみが、この1年で培った、経験と適応力

内田暁

2019.10.28

グランドスラムを優勝した大坂は、初戦を「大きなチャレンジ」と言う。(C)GettyImages

グランドスラムを優勝した大坂は、初戦を「大きなチャレンジ」と言う。(C)GettyImages

 加えてこの日の大坂は、劣勢の局面でその原因を分析し、修正する適応力をも発揮した。
 
 例えば第1セットでの大坂は、相手の左腕から放たれるフォアのクロスをストレートに切り返そうとしては、ミスでポイントを失っていく。そこで、「ライン際ではなく、強く中央にボールを打ち返そう」と気持ちを切り替えることで、徐々に流れを引き寄せた。
 
 さらに、「最近はボールを強く叩くことよりも、コート上のポジショニングに重きをおいている」という彼女は、ラリーを重ねるごとに落ち着きを増し、神経を研ぎ澄ます。ファイナルセット終盤では、ゲームカウント5-2から5-4まで追い上げられたが、「なぜブレークされたかわかっていた」という大坂に焦りはない。


「今日の試合は、常に状況を分析し、彼女(クビトワ)のプレーにいかに適応するかが鍵だった」と振り返る大坂は、まさにその勝負において相手を上回り、価値ある初戦の勝利を手にした。
 初出場だった昨年は、途中棄権を含む3連敗で、大会を後にしている。

 2年目でつかんだ、初の白星。その件について水を向けられると、「去年のことを思い出させてくれてありがとう」といつものシニカルなジョークで応じた後、大坂は冷静にこう続けた。

「私は基本的に、トーナメントの1回戦はあまり良いプレーができず、戦うごとに調子を上げていくタイプ。でもこの大会では、最初から良いプレーが求められる」

 だからこそ「大きなチャレンジ」だという初戦で、彼女は2年越しの課題を克服してみせた。これで今年9月の全米オープン後は、まだ負け無しの11連勝。
苦しみや悲しみも含めた経験を勝利へと昇華しつつ、有終の美に向けて、大坂の疾走は続いていく。

取材・文●内田暁
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