専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外テニス

【レジェンドの素顔11】北欧の涼風を感じさせる男、ステファン・エドバーグ│前編

立原修造

2022.12.31

美しい金髪をなびかせて「貴公子」と呼ばれたエドバーグ。写真:THE DIGEST写真部

美しい金髪をなびかせて「貴公子」と呼ばれたエドバーグ。写真:THE DIGEST写真部

ペルンフォルスと対照的なのがエドバーグである

 スウェーデン人の性格を一言でいえば、内向的であるということだ。ヨーロッパの他のどの国の人に聞いても、きっとそう答えるだろう。とにかく口が重い。白い歯を他人に見せることに恐怖するかのように、口を開かないのだ。

 レストランで、街角で、ホテルのロビーで、アメリカ人やフランス人のようにスラスラと会話が進むなどということはない。この国の大きな社会問題は”孤独な人”の救済にあるというのも何となくわかる気がする。

 なぜ、スウェーデン人はそんなにも口を閉ざすのか?その理由の1つに、この国が19世紀まで極端な農業国であり、国民の9割までが地方に散り散りに住んでいたという国内事情が挙げられる。

 不毛の大地と黙々と対峙していた人間の口が軽いはずがない。20世紀に入って、一転して工業国に大変身したとはいえ、地方出身者が大多数を占める現状では、コミュニケーションも、あまり滑らかにはいかないようだ。

 それと関連する話として、”スウェーデン人の儀礼好き”ということがある。例えば、スウェーデン人に手紙を出す時、宛名に氏名を書くだけでは先方は気分を害する。丁寧に肩書を添えなければいけない。
 
 例えば「食料品販売 小売業 インゲマル・ステンマルク様」といった具合だ。これでいくと、エドバーグに手紙を出す時は「テニス選手業 世界ランキング3位 ステファン・エドバーグ様」と書かなければならないのである。日本人もかなり儀礼好きといわれるが、ここまで極端ではない。

 こんなエピソードもある。見知らぬ2人のスウェーデン人が列車の旅をしていた。2人は退屈のあまり、おしゃべりをしたいのだが、互いに職業や肩書を知らないので、話を切出すことができないでいる。ついに片方が意を決して次のように話しかけた。

「急行列車にご乗客のあなた様⋯⋯」これで何とか話のきっかけはつかめた。しかも、2人が乗っていたのは急行ではなく、各駅停車の列車である。ここまで気を使わなくては会話が始まらない。先方が気を良くしたのはもちろんである。

 これ1つをとってもスウェーデン人の無口さがわかる。彼らは気やすく人に話しかけようとはしない。そのぶん自分に語りかけるのである。内へ、内へ、その思いは深く入りこんでいく。内向的になるわけである。

 そういう意味でも、ペルンフォルスは従来のスウエーデン人とは零囲気が違う。アメリカに武者修業に出る心意気などは、彼らの遠い祖先であるバイキングを思わせるくらい勇ましい。


~~中編へ続く~~

文●立原修造
※スマッシュ1987年6月号から抜粋・再編集
(この原稿が書かれた当時と現在では社会情勢等が異なる部分もあります)

【PHOTO】ボルグ、コナーズ、エドバーグetc…伝説の王者たちの希少な分解写真/Vol.1
 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号