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海外テニス

【レジェンドの素顔9】ミスもするがエースも取る。テニス界に変化をもたらした男、ジミー・コナーズ│前編<SMASH>

立原修造

2021.08.11

ジミー・コナーズは、スピードテニスの時代をもたらした。写真:THE DIGEST写真部

ジミー・コナーズは、スピードテニスの時代をもたらした。写真:THE DIGEST写真部

 大一番におけるスーパースターたちの大胆さや小心をのぞいていくシリーズ「レジェンドの素顔」。今回からはジミー・コナーズを取り上げる。

 オーソドックステニスの模範とまで言われたケン・ローズウォールを完全に打ち破ることで、ジミー・コナーズは、スピードテニスの時代をもたらした。コナーズの敷いたレールの上を、ボルグが、マッケンローが、レンドルが走り、テニス界に黄金期が到来したのだ。コナーズが34歳の時、成績は年々下降線をたどり、引退もささやかれていた。この時期、コナーズは何を考えていたのだろうか。

◆  ◆  ◆

オレも歳をとったということさ

 この頃、コナーズはしきりとあのときのローズウォールの姿を思い出す。
 時は13年も前のウインブルドン・センターコート――。

 表彰式を終えて、先にロッカールームに戻るローズウォールのうしろ姿は、今にも丸まってしまいそうなくらい小さく見えた。しかし、あのときのコナーズは、ローズウォールの心中まで察することはできなかった。ローズウォールがどんなに淋しい思いでいたか。

「今なら、わかる。それだけオレも歳をとったということさ。でも、この13年間は長かったのか、短かったのか―――」。コナーズの心中は複雑だ。
 
 老醜という言葉がある。13年前、コナーズの眼から見たローズウォールは老醜以外の何物でもなかった。今でもはっきり覚えている。1974年、ウインブルドンで決勝の相手がローズウォールと決まったときは、笑いが止まらなかった。どう逆立ちしても、負ける相手ではないと心底から思えた。

 もちろん、ローズウォールの輝かしい戦績を、軽視したわけではなかった。特に、正確無比なバックハンドストロークは”テニスが初めて生んだ芸術品”とまで言われていたことも知っていた。

 しかし、どんなスポーツにも“勢い”というものがある。コナーズ21歳、ローズウォール39歳。どちらに“勢い”があるかは誰の眼にも明らかだった。事実、決勝戦は一方的になった。一方的という表現で言い足りなければ、絶望的とまで言い直した方がいいくらいだった。もし、テニスにもボクシングと同じようなルールがあったのなら、第1セットを終わった時点で、ローズウォール側は“ギブアップ”のタオルを投げ込むべきだっただろう。
 
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