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国内テニス

車いすテニス、ジュニア、プロ、あらゆる立場の選手が同じコート上で戦う!『WJPチャレンジテニス』の型破りな魅力<SMASH>

内田暁

2021.10.27

車いすテニスJr世界1位の小田(左)と千葉県でトップクラスの実力を誇る佐川(右)が真剣勝負!WJPならではの光景だ。(C)長浜功明/WJP

車いすテニスJr世界1位の小田(左)と千葉県でトップクラスの実力を誇る佐川(右)が真剣勝負!WJPならではの光景だ。(C)長浜功明/WJP

 今回、イベントに初参戦した車いすテニスの小田凱人は、車いすテニスジュニアの世界1位に座す15歳。その小田と対戦した佐川永遠は、千葉県でトップクラスの14歳である。この顔合わせに関しては、当初実行委員の中でも「勝負にならないのでは? 小学生や女子ジュニアとの対戦の方が良いのでは?」と懸念の声が上がったという。

 だが、松井は断固反対した。

「小田君は中3なのだから、本当は同じ歳の男子と対戦させたかった。さすがに全日本レベルだと厳しいだろうけれど、千葉県のトップクラスなら勝負になる。その方が小田君だって嬉しいし、相手の選手だってテレビ中継もあるなかで試合ができるのは嬉しい。多くの人が見ているなかで、本気でやらない訳にはいかないじゃないですか。結果は、仮に大差になったって良い。その後、二人はずっと仲良くなれるかもしれないし、そういう場を作ってあげたいと思った」

「小学生が相手だったら、小田君に失礼だし小田君だって燃えてこない。同じ世代相手に『お前は千葉でトップかもしれないが、俺は車いすテニスで世界を張ってるんだ!』っていう、そういうところの戦いが俺は見たかった」
 
 松井が、このカード実現にこれほどこだわったのは、小田もまた、松井の熱に応えるだけの信念の持ち主だからだろう。試合は、小田も左腕から放つ強打で見せ場も作ったが、結果的には差がつき敗れる。その試合後の会見で、小田は大人びた口調で言った。

「僕は今日の試合で、障がい者や一般、ジュニアの壁は無いというメッセージを伝えたかった。だから同世代のジュニア選手と対戦したけれど、僕のスコアが悪かったので、今回それができなかった」

 悔しさをにじませるも、小田は「来年、もっとレベルアップして戻ってきたい」と明言する。松井がたぎらせた情熱は、新たな目的意識を小田の胸に灯したようだ。

 松井が少年時代から目にした景色のように、あるいは小田が発したいと願ったメッセージのように、年齢も性別も障がいの壁もなく、あらゆる立場の人々が同じコートに立てるのは、テニスという競技が持つ美徳の一つだろう。

 そのテニスの可能性をさらに拡張すべく、松井は今後、「このイベントを地方でもやりたいし、一般のテニス愛好家やシニアの方の参戦も実現させいたい」と言った。

 思えば、松井が育ったTTCのいたるところには、4つのボールを組み合わせたエンブレムが飾られている。

 4つのボールがそれぞれ象徴するのは、ジュニア及び選手の育成、指導者の育成、医科学からのサポート、そして、テニスの楽しさを全ての人々に伝えることである。

取材・文●内田暁

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