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海外テニス

一度はテニスから離別した、新女王バーティーの復活劇。「私の周囲にはうまく導いてくれる人たちがいた」

内田暁

2019.11.07

全てのショットを器用にこなすオールラウンドプレーヤー。才能と努力と少しの休息が結実し、世界1位へ。(C)Getty Images

全てのショットを器用にこなすオールラウンドプレーヤー。才能と努力と少しの休息が結実し、世界1位へ。(C)Getty Images

 結果的にテニスを離れたその2年間は、今の彼女を形成する、最も重要な年月となった。

「幸運だったのは、私の周囲にはうまく導いてくれる人たちがいたこと。そして、自分で決断させてくれたこと」

 家族や友人との時間を大切にし、クリケットなど他のスポーツに打ち込み、そして子どもたちにテニスを教えた経験は、彼女の視野を広げ、そして最終的には、いかにテニスが好きだったかを気づかせる。

 だからこそ、「テニスをするのは、自分自身のため」と呼びかける彼女の言葉は、爽快かつ深く響いた。

 WTAファイナルズを戦う彼女は、少女時代から周囲を驚嘆させてきた豊富なショットバリエーションと優れたタッチを、人間的な成熟で統合する。ラウンドロビンの2回戦では、大坂の代役のバーテンスに破れ落胆したが、その敗戦から気持ちを切り替えクビトワに快勝したことに、彼女はまず胸を張った。
 決勝では、過去5戦全敗のスビトリーナを、スコア以上の接戦の末に退ける。高いコートカバーを誇るスビトリーナとの一戦は、オールコートプレーヤーとしての彼女の魅力が、最大限に発揮された試合でもあった。

 ブレークバックし流れを引き戻した第2セットの第4ゲームは、最たるものだ。低い軌道のバックのスライスでパッシングショットを決め、広角に自在に打ち分けるフォアで相手を振り回し、スマッシュを叩き込む。客席から幾度も感嘆のため息と歓声を引き出しながら、バーティーは栄冠へと一気に駆け込んだ。


 グランドスラムタイトル、初の世界1位、年間最終ランキング1位、そして、一大会で得られるテニス史上最高額の賞金――。

 多くの選手が望む全てを、この1年で手にしたバーティーだが、テニスをプレーする真の目的を知る今の彼女に、慢心や迷いはないという。

「まだまだ、全ての面で上達する余地だらけ。毎日、少しでも良いプレーヤーになりたいと思っている。でもそれ以上に大切なのは、良い人間になること」

 自分のためにプレーするのは、周囲の人々の支えを知るからこそ。

 プレー面も、そして歩むキャリアも多様性に富んだ、ロールモデルに相応しい新女王の戴冠だった。

取材・文●内田暁

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