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海外テニス

WTAファイナル初白星の大坂なおみが、この1年で培った、経験と適応力

内田暁

2019.10.28

冷静な自分と、脆い自分。戦っている時には「2人の人格がいるみたい」と言う大坂。(C)GettyImages

冷静な自分と、脆い自分。戦っている時には「2人の人格がいるみたい」と言う大坂。(C)GettyImages

 WTAファイナルズ出場2度目の22歳が、同大会7度の出場を誇る29歳に勝った理由が‶経験と適応力‴だと言ったら、少々奇妙に響くだろうか?
 
 大坂とクビトワの対戦は、過去に1度を数えるのみ。その唯一の対戦が今年の全豪オープン決勝で、その時は大坂がフルセットの大熱戦を制した。
 もちろんその勝利の記憶は、彼女に良いイメージを残していただろう。ただそれ以上に、2度目の対戦の際、大坂が先の試合を思い出したのは、サービスエースを奪われた時だったという。

「エースを決められても、『大丈夫、あれは彼女の最大の武器の一つだもの』と思えた。決められても仕方ない、だから怒ってはいけない。それは戦う前からわかっていたことだもの」

 そう自らに言い聞かせることで、彼女は平静を保った。

「私の中には、とても冷静な自分と、とても脆い自分という、2人の人格がいるみたい」だと自己分析する彼女は、過去の対戦時のデータを読み込むことで、〝冷静な自分″を呼び起こした。
 さらに大坂は、相手の武器は弱点と表裏であることも、過去の経験から理解していただろう。果たして、試合序盤からリターンでかけ続けた重圧の蓄積は、重要な局面で相手の手元を狂わせる。ブレークで先行した第1セットの第8ゲームで、クビトワは3つのダブルフォールトを犯し、大坂にブレークを献上したのだ。

 後に、「とても落胆した」と認めるこの崩壊の訳を、クビトワは「彼女(大坂)がリターンで攻めてきたので、良いセカンドサーブを打たなくてはと意識した」と説明した。

「そのような賭けは、時に報われないものなの」と、敗者が自嘲気味に振り返る勝負のアヤ。ただそれを引き出したのは、大坂のプレーであることは間違いない。
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