ゼン・チンウェンがテニスを始めたのは、リー・ナの快挙を目にする数年前のこと。現在のすらりとした長身からは想像しにくいが、子どもの頃の彼女は「小太りで、病気がちだった」。そこで両親は、彼女に様々なスポーツをさせたという。卓球にバドミントン、バスケットボール、などなど。その中でテニスを選びとったのは、「相手と対戦するのが楽しかったから」。やがてリー・ナの姿を見ることで、「楽しいこと」は彼女の夢になった。
　
　現在拠点とするスペインのバルセロナに移住したのは、２年前。

「スペインの選手はハードワーカー。当時の私はまだジュニアだったけれど、スペインの選手たちを見て、これこそが私に必要なものだと思った」
  　本人曰く、スペインで手にした最大の収穫は、「忍耐力」と「戦術」。

「それまでの私は、良いストロークとはパワフルなショットだと思っていた。スペインに行ってからは、我慢することを学んだ。その上で、守る時と攻めるべき場面の見極めを学んだ」。その成果は、何より我慢を求められるクレーで勝っている事実が示している。
　
　勢いのあるアンダードッグは、記録とも戦う世界１位にとって、何より怖い相手だろう。シフィオンテクが女王の威厳を示し、連勝を伸ばすのか？　あるいは、新鋭がアップセットを起こすのか？

　大会前半戦の山場となりそうだ。

現地取材・文●内田暁

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