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海外テニス

激闘の末に王者ジョコビッチを破ったナダル!「まだ準々決勝、何も勝ち取っていない」と次なる戦いへ意欲<SMASH>

内田暁

2022.06.02

ランキングよりも自身のる成長を目標に戦い続けるナダル。準決勝の相手はネクストキングの一人である世界3位の若獅子ズベレフだ。Images

ランキングよりも自身のる成長を目標に戦い続けるナダル。準決勝の相手はネクストキングの一人である世界3位の若獅子ズベレフだ。Images

 そして、第4セット。ジョコビッチがブレークを奪い、ゲームカウント5-3でサービスゲームを迎えるも、3度のデュースの末にナダルがブレークバックで追いつく。

 大歓声を背に、タイブレークへと駆け込んだナダルを止める術は、もはや世界1位すら持たなかった。今回の対戦前、13回の全仏優勝を誇る“赤土の王者”は、自身を「“アンダードッグ”だと感じている」と言った。

「赤土の王と呼ばれる気分とはどんなものか?」

 そう問われたナダルは、いつもの困ったような笑みを浮かべて、こう答えている。

「僕の家族やチームの人たちは、誰一人として、僕をそんな風に呼ばないよ」

 さらには、オーストラリア人ジャーナリストのクレイグ・ガブリエル氏が、ナダルとジョコビッチに共通して尋ねた「世界1位であることのメリットとデメリット」に対し、2人は対照的な解を口にした。

「その質問になんて答えたら良いかわからないよ。だって僕は、自分を“世界1位だ”という風に考えたことはないから。僕にとっては、単なる数字。だから1位であることに、プレッシャーも幸福感も覚えない。どんなランキングだって、常に上達したいという自分の目標に変わりはないから」

 これは、ナダルの答えである。
 
「今の質問そのものが、答えだ。1位であることがメリットであり、デメリットでもある」

 禅問答めいた言い回しで応じるジョコビッチは、こうも続ける。

「スポーツで……、特に個人競技で1位になることは、最上級の挑戦だ。同時に1位は常に追われる身であり、あらゆる試合で立ち向かってこられるのが、1位の負の側面だ」
 
 世界1位であり、第1シードであり、今回の対戦でも優位と目されたその立場が、ジョコビッチが「明かすのが憚られるほどに、激しい感情の起伏」に襲われた理由だろうか。完全アウェーの状況に、心が揺らいだ場面もあっただろう。それでも彼は、「今日は自分より良い選手に敗れた」の言葉に、あらゆる想いを込めた。

 一方のナダルは会見で、「これが最後のローランギャロスとの想いはあるか?」と問われると、極めて平静なトーンで答える。

「ここの席に座り、何かを隠したりおためごかしを言うには、僕は歳を取りすぎたよ」

「これまで言ってきた通り、何が起こるかは想像がつかない。今ここに居るのは、それにふさわしい準備をしてきたからだ。でも、その先はわからない」。

 同時に彼は、こうも言った。

「今は、この美しい瞬間を、素晴らしい夜を満喫したい。でも明日になれば、準決勝のことを考える」

「これはまだ、準々決勝だ。僕はまだ、何も勝ち取っていないんだ」……と。

現地取材・文●内田暁

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