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海外テニス

本玉真唯、ウインブルドン予選突破!背中を押した地元ファンの大歓声に「泣きそうになった」<SMASH>

内田暁

2022.06.25

地元テニスファンの歓声をエネルギーに本玉は、自分のプレーを貫いてついに大好きなウインブルドンへとたどり着いた。(C)Getty Images

地元テニスファンの歓声をエネルギーに本玉は、自分のプレーを貫いてついに大好きなウインブルドンへとたどり着いた。(C)Getty Images

 追い上げる者の勢いが、そのまま継続するかに思われた第3セット。だが本玉は、ゲームポイントがありながら最初のゲームを落とす。

「なにやってんの、バカ!」

 思わず自分への、叱責の言葉が胸に響く。

 だが一方で、頭の中は「冴えていた」。

 足を止めず、心を切らさず、足を滑らせ芝にヒザをついても左手で返球する執着が、すぐに実を結んでいく。

 直後にブレークバックすると、そこから3ゲーム連取。

 そして試合後に、「あれが大きかった」と振り返る局面が、3-1のサービスゲームで訪れる。

 デュースの場面で続いた長い長いラリーの末に、跳ねるようにフォアサイドに回り込んだ本玉は、逆クロスに鋭いウイナーを叩き込む。

 その時、かたずを飲んで攻防を見守っていた客席から、爆ぜるような歓声が上がった。

 その声を聞きながら、「めっちゃ泣きそうになった」と後に本玉は打ち明ける。

「ワーッとお客さんが盛り上がって……ほんと泣きそうになりました、試合中なのに。嬉しくて」

 その喜びを胸に灯し、ターニングポイントとなったゲームをキープ。
 
 マッチポイントでは、本玉の強打に押された相手のボールが、力なくネットを叩く。

 そのとき勝者は、コーチと母親、そして兄が座る一角に身体を翻し、天に突き上げた両手で顔を覆った。

「今回メインドローに上がれたのは、コーチの(比嘉)ジャイミーさんや(神尾)米さん、家族のみんなにプレゼントしたい勝利です。自分の力だけでは絶対に無理だった。本当に支えてくれている人たちに感謝だな……と思いながら試合していました。タイブレークをあんな数字で取られたらへこむこともあるけれど、今日は応援が多かったので気持よかったです」

 こみ上げる想いがこぼれるように、彼女は朴訥な口調で語る。

 試合後のあの深いお辞儀は、その喜びと感謝の気持ちの現れだった。

 本戦での目標は「あの舞台をかみしめたい。悔いなく、すべてを出し切って戦う」こと。

 それこそが、応援し支えてくれた人々への、何よりもの返礼だ。

現地取材・文●内田暁

【PHOTO】本玉真唯の回り込みフォアハンドリターン、ハイスピードカメラによる『30コマの超分解写真』
 
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