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海外テニス

本玉真唯、初めてのグランドスラムを戦い終えて広がった視界「自分を外から見られるようになった」<SMASH>

内田暁

2022.07.01

本玉を指導してきた神尾米(左)、比嘉ジャイミー(右)の両コーチ。周囲の人々のサポートに本玉は改めて感謝を示す。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

本玉を指導してきた神尾米(左)、比嘉ジャイミー(右)の両コーチ。周囲の人々のサポートに本玉は改めて感謝を示す。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 ただこの2回戦の顔合わせに関しては、“チェンジ・オブ・ペース”の経験において相手が一枚上をいった。特にパリーの低く滑るスライスは、芝では一層の効力を発揮する。

 速い展開の打ち合いでは、むしろ本玉が上をいった。ただ相手がペースを落とした時、一見チャンスボールに見える決め球を、ネットにかける場面が増えていく。その「ミス」の理由を、本玉は次のように分析した。

「スライスでペースを遅くされ、相手もポジションに戻っているなかで、狭い所を狙いすぎたり、自分の身体も止まって単発勝負になってしまった」

 年齢では3歳下だが、既にトップ100に定着している相手との差が、最終的に「大事な場面で出た」と本玉は踏む。

「自分がブレークポイント握ったりリードしている場面が多いなかで、決めさせてくれないのがトップ100にいる選手。自分もそこで同じようなミスをして取り切れなかった。攻めと、つなげるところが中途半端になってしまった。自分がリードしている長いゲームで、そこをしっかり取り切れたら良かったのになって思っています」

 言葉の所々に悔しさをにじませながらも、紡がれる内容は冷静で緻密。その点にも、今の彼女がこの舞台に立てた理由があるだろう。
 
 今回のイギリス遠征に来る直前には、ランキングや結果にとらわれすぎて、2週間ラケットを一切握らぬ日々を過ごしもした。

「テニスを始めて以来、ケガ以外でこんなに休んだのは初めて」という、本人にとっては異常事態。ただ、コーチたちから「戻りたくなるまで戻らなくていいよ」と、温かな言葉を掛けられる。そのなかで自分自身と向き合い、落ち込んだ理由を考えることで、俯瞰的な視点を獲得したという。

 その広がった視界に入ったのは、「コーチの米さんが、どれほど自分のことを思ってくれていたか」という周囲の人々の存在。それら新たな視座を獲得したことで、試合中にも「これはこういう理由でこうなったのかなと、自分を外から見られるようになった」と言った。

「目の前のことに集中してきた」帰結としてたどり着いたウインブルドンの舞台は、彼女の視線を遠くに向かせもしたようだ。

「ここまで勝ったからこそ、ここに戻ってきたい、またこの舞台で戦いたいと、今はすごく強く思っています」

 一層広がった視界の先に、目指す高みを見据えて進む。

現地取材・文●内田暁

【PHOTO】本玉真唯ら、ウインブルドン2022に挑む日本人選手たち
 

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