ズベレフやチチパスら、次代を担うと期待された世代の粗暴な振る舞いが続いたため、「最近の若い選手は荒れている」との声が、取材陣の間でも上がりがちだ。ズベレフに“執行猶予”措置が下されたこともあり、「スター選手に甘すぎる」との意見も多く聞こえる。
実際に、最近になり選手の行為が荒れてきたのか否か、それを定量化するのは難しい。ただ、主審として数々のグランドスラム名勝負を裁き、現在はフランステニス協会で働くパスカル・マリア氏は、興味深い考察を述べた。
「選手は以前よりも、試合でフラストレーションを溜め、観客やボールパーソンに怒りをぶつけがちになった」との見解を示したマリア氏は、その理由の一端を「エレクトロニック・ラインジャッジ」に求めたのだ。
全仏オープンやウインブルドンでは、従来通り線審がボールのイン/アウトを判定するが、全豪オープンと全米オープンは線審を排し、電子ライン判定システムを導入している。これは、コート周辺に設置された遠隔追跡カメラがボールの着地点を計測し、コンピュータがリアルタイムで判定を下すシステム。現在では北米を中心に、男女のツアー大会も電子ライン判定を用い始めた。
ジャッジの正確性という意味では、人より、電子ライン判定に軍配が上がる。というよりも、選手に反論の余地はない。そしてその事実が、選手を苛立たせるのではとマリア氏は言った。
「線審が判定を下している場合は、選手は抗議をし、場合によっては話すことで気持ちが落ち着くこともあるでしょう。でもそれができないから、フラストレーションを溜めやすく、不満が観客やボールキッズに向かっているように感じます」
さらには、線審という“監視の目”がコート内から消えたことで、選手のタガが外れやすくなったともマリア氏は見る。
もしこれらの見立てが正しいのなら、システムの移行期のなかで、選手や審判も従来とはやや異なる対処法を模索するべき時なのかもしれない。線審の需要が減り人材確保も難しくなるなかで、審判員の育成面も含めた、奥の深い問題だ。
現地取材・文●内田暁
【PHOTO】キリオス、チチパスらウインブルドン2022で活躍している男子選手たちの厳選写真
実際に、最近になり選手の行為が荒れてきたのか否か、それを定量化するのは難しい。ただ、主審として数々のグランドスラム名勝負を裁き、現在はフランステニス協会で働くパスカル・マリア氏は、興味深い考察を述べた。
「選手は以前よりも、試合でフラストレーションを溜め、観客やボールパーソンに怒りをぶつけがちになった」との見解を示したマリア氏は、その理由の一端を「エレクトロニック・ラインジャッジ」に求めたのだ。
全仏オープンやウインブルドンでは、従来通り線審がボールのイン/アウトを判定するが、全豪オープンと全米オープンは線審を排し、電子ライン判定システムを導入している。これは、コート周辺に設置された遠隔追跡カメラがボールの着地点を計測し、コンピュータがリアルタイムで判定を下すシステム。現在では北米を中心に、男女のツアー大会も電子ライン判定を用い始めた。
ジャッジの正確性という意味では、人より、電子ライン判定に軍配が上がる。というよりも、選手に反論の余地はない。そしてその事実が、選手を苛立たせるのではとマリア氏は言った。
「線審が判定を下している場合は、選手は抗議をし、場合によっては話すことで気持ちが落ち着くこともあるでしょう。でもそれができないから、フラストレーションを溜めやすく、不満が観客やボールキッズに向かっているように感じます」
さらには、線審という“監視の目”がコート内から消えたことで、選手のタガが外れやすくなったともマリア氏は見る。
もしこれらの見立てが正しいのなら、システムの移行期のなかで、選手や審判も従来とはやや異なる対処法を模索するべき時なのかもしれない。線審の需要が減り人材確保も難しくなるなかで、審判員の育成面も含めた、奥の深い問題だ。
現地取材・文●内田暁
【PHOTO】キリオス、チチパスらウインブルドン2022で活躍している男子選手たちの厳選写真