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海外テニス

日本人選手も被害に――。悩ます賭博絡みのヘイトメッセージが改善されないテニス界の懐事情とは?<SMASH>

内田暁

2022.07.07

今年の全仏オープンでは2回戦敗退となったガルシアだが、敗れたと同時に心無いメッセージが押し寄せたという(C)Getty Images

今年の全仏オープンでは2回戦敗退となったガルシアだが、敗れたと同時に心無いメッセージが押し寄せたという(C)Getty Images

 選手のメンタルヘルスが叫ばれ、WTA(女子テニス協会)などの運営組織も「選手の心の安全を支援する」と声高に叫ぶなかで、これらヘイトメッセージへの対応は、さして進んでいないようにも見える。

 その理由の一端は、ATP(男子プロテニス協会)やWTAの大会ツアーも、“賭博サイト”に収益面で頼っている台所事情にあるだろう。特に、欧州を中心に大手賭博サイトを運営する『Betway』は、ATPツアーのマイアミ・オープンやアトランタ・オープンに加え、ハンブルグ欧州オープンのスポンサー拡張が発表されたばかり。

 アトランタ・オープンの大会ディレクターは、同企業と提携したことで「(USドルで)6桁以上の収益が見込める」と米国経済紙に語っている。

 またWTAも、昨年末に、ファンタジースポーツやオンラインカジノを運営する『FanDuel』社と契約。同社に、試合のスタッツや選手のデータなどを提供するという。
 
 WTAのマイキー・ロウラー社長は「同社との提携により、さらなるファンベースが獲得できる」と喜ぶと同時に、「健全なギャンブル運営にも力を合わせ取り組んでいきたい」とも加えた。ヘイトメッセージのみならず、選手への“八百長持ち掛け”をいかに防ぐかなど、課題は多い。

 世界1位のノバク・ジョコビッチは、19歳の頃に、20万ドルと引き替えに敗戦を持ちかけられたことがあるという。

 そんな自身の経験も踏まえ、かつて彼は、こう語ったことがある。

「例え合法でも、賭博の運営会社が大会のスポンサーをするのが、果たして正しいことなのか? ただ一つ言えるのは、テニスがここまでの人気を誇ってきたその理由は、競技が誇る高潔さにこそあるはずだ」
 
 運営団体、選手、支援企業、そしてファン——。それぞれが「高潔さ」を念頭に、適切なバランスを模索していくしかない。

取材・文●内田暁

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