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海外テニス

セレナのラストマッチの相手トムヤノビッチが共感、後輩ガウフが感謝「これまで以上に大きな夢を目指したい」<SMASH>

内田暁

2022.09.04

テニス界に君臨し続けたセレナが、全米3回戦で最後の試合を終えた。(C)Getty Images

テニス界に君臨し続けたセレナが、全米3回戦で最後の試合を終えた。(C)Getty Images

 17歳で全米オープンを制し、以降、実に23年の長きにわたり女子テニス界の中枢に君臨し続けたセレナは、「革命児」や「ロールモデル」、時には異端児とも呼ばれてきた。

 ロールモデルとは単に「お手本」の意に留まらず、人々がその姿に自身を投影し、理想の未来像や夢を見させてくれる存在を指すのだろう。セレナが成し遂げてきた偉業の数々は、恐らくは多くの少年少女に、それぞれが置かれた環境下では思いつくことすらできなかったほどに大きな夢を示してきた。

 黒人、ロサンゼルスのゲットー育ち、女性、母親――彼女が内包する多彩なペルソナは、多様な人たちにとって、己を投影するスクリーンとなる。一見、共通項の少なそうに見えるトムヤノビッチもまた、そのような一人だった。

 4度のグランドスラム優勝者の大坂なおみや、セレナの後継者と呼ばれる世界12位のココ・ガウフは、いずれも自分を「ウィリアムズ姉妹の産物」だと定義する。特に18歳のガウフは、セレナが革命を起こした後の世界を見て育った世代だ。

「わたしはこれまで、疎外感を抱くことなく成長することができた。なぜなら世界1位の選手が、自分と同じような見た目だったから」
 
 セレナがもたらした恩恵を過不足なく受け取るガウフは、「セレナから個人的に助言をもらったこと」として、次のように語っている。
 
「女性は……特に黒人女性は、自分の可能性を低く見積もってしまいがち。でもセレナは、決して自分を低く見積もることがなかった。そのような彼女の姿を見たことがない。それが、彼女が私に教えてくれたことだと思う」。

 セレナが敗れた後、テニスプレーヤーとして最後になる会見を終えた部屋には、感傷の余韻が長く残る。その中に現れたトムヤノビッチは、凛とした表情で言った。

「私に、どれだけの時間が残されているかはわからない。でも、これまで以上に大きな夢を目指したいと思った。なぜならそれこそが、セレナが体現してきたことなのだから」と。

「セレナが去ったテニス界は、今までと同じではない」ともトムヤノビッチは言った。

 ただそれは、必ずしも喪失を指すのではないだろう。革命児が残した遺産は、今コートに立つ選手たちに、そしてあらゆる舞台で未来を担う次世代の中に、息づいていくのだから。

現地取材・文●内田暁

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