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海外テニス

冷遇されるも見事に全米OPの頂点に立ったシフィオンテク。最後は大会側の粋な計らいに笑顔「誰が入れてくれたの⁉」<SMASH>

内田暁

2022.09.12

大勢の観客に祝福されて全米オープン初タイトルを獲得したシフィオンテク。(C)Getty Images

大勢の観客に祝福されて全米オープン初タイトルを獲得したシフィオンテク。(C)Getty Images

 だが実際には、試合当日のチケットは最も安い席でも300米ドル(約42,000円)、コートサイドには4,000米ドル(約56万円)の高値がついた。ニューヨークの、20万人を超えるポーランド系アメリカ人の人口を思えば、シフィオンテクの人気も妥当。アフリカ大陸出身選手、そしてアラブ系女性として種々の「初」を切りひらくジャバーの姿も、開拓者の国の人々の琴線に触れただろう。

 そのジャバーは、「とても緊張していた」ことを決勝後に明かす。抱えてきた重圧は試合直後に特に顕著で、サービスキープに苦しんだ。

 対するシフィオンテクは、今大会で最高の鋭さを立ち上がりから見せていた。二人のパイオニアへの敬意からだろうか、会場の凛とした緊張感も、シフィオンテクのパーソナリティに合致したかもしれない。コップを落とす音が鳴り響くほどのサービス前の静寂は、このコートでは異例中の異例だ。

 第2セットに入ると、ジャバーのサービスの精度が上がったことと、シフィオンテクの集中力に若干の低下が見られたこともあり、一進一退の攻防が繰り広げられた。だが結果論ではあるが、勢いに乗った第9ゲームをブレークできなかったことが、ジャバーの勝利の可能性を閉ざす。

 迎えた、2度目のマッチポイント。ジャバーのショットがラインを超えるや否や、シフィオンテクは、その場に大の字に倒れる。わずか4度しか立ったことのないコートで、彼女は2万人を超えるファンの祝福を全身に吸い込んだ。
 
 センターコートでの表彰式後、米国テレビ局の野外スタジオに姿を現した新女王を、ファンは熱狂的に迎え入れた。センターコートのチケットを手にできなかった多くのファンも、会場内の巨大スクリーン越しに彼女を応援していたのだ。

 テレビスタジオの出演も終えた彼女は、休む間もなく、会見室へと足を運ぶ。会見室のテーブルには、勝利の証である銀杯が置かれていた。

 もっとも彼女は、トロフィーに遮られ記者の顔が見えないことを憂慮し、「トロフィー、ガチャーンって動かしちゃってもいいかしら?」と手振り付きでおどけて見せた。その時きっと、大会関係者は肝を冷やしたことだろう。なぜかと言えば……その答えは、会見終了時に明かされる。
 
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