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海外テニス

奈良くるみが東レPPOでシングルス・ラストマッチを終え、「すごく幸せな時間でした」<SMASH>

内田暁

2022.09.18

第1セット、キャリア集大成のような奈良らしいプレーで圧倒した。写真:スマッシュ編集部

第1セット、キャリア集大成のような奈良らしいプレーで圧倒した。写真:スマッシュ編集部

 テニスに楽しみを見いだしていた彼女は、「負けず嫌いではない」自分に自覚的でもあったという。是が非でも相手に勝ちたい——という闘争心が、コートで沸いてくることがあまりない。その事実に、小さなコンプレックスを抱いた時期もあった。

 そんな彼女が、まだ引退を表明する前の今年の夏、テニスが好きな理由として、こんなことを言っていた。

「自己満足ではないけれど、自分に負けるのが、私にとっては一番ショック。人に負けることに関しては、そこまで負けず嫌いではないんです。でも自分に負ける時だけは本当にショックというか、落ち込むことがあるので」

 あとで振り返った時、「自分を“ダッサ!”って思いたくない。後悔したくない」。それが、彼女にとっての「一番のエネルギー」だと言った。

 最後の試合を終えてコートを去る時、彼女は「後悔はなかった」という。

「それはすごく自分でも意外だったんです。いろんなアスリートの方が引退する時に『後悔はありません』と言うのを聞いて、本当にそんなことありえるのかな、って思っていたので。でも自分がその立場に立って振り返ると、本当に一つの後悔も今はないです」。会見の席で、彼女はそう明言した。
 
 シングルスでの奈良の今大会は終わったが、次は本戦で、ダブルスの戦いが待っている。パートナーは、同期の土居美咲。ジュニア時代から共に成長し、15年前にはウィンブルドン・ジュニア部門で、ダブルス準優勝を勝ち取った盟友だ。

 今回の奈良のシングルス・ラストマッチのコートサイドには、その土居をはじめ、穂積絵莉や加藤未唯ら日本人選手たちの姿もあった。コートを去る際、土居たちが座る一角に目を向けた奈良の目からは、涙がこぼれた。

「これだけの観客の皆さんや、選手の仲間も最後の姿を見てくれたので、そこを見ると感極まってしまったところもありますが、すごく幸せな時間でした。今まで自分がこんなに色んな方にサポートしてもらえて、応援してもらって、本当に良い思いをさせてもらえたなと、感謝の気持ちが沸き上がりました」
 
 負けず嫌いではないけれど、自分に負けるのが何より嫌い。そして自分を支えてくれる人たちのために、勝利を求める――そんな奈良くるみのキャリアの集大成は、まだダブルスで続いていく。

取材・文●内田暁

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