専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
国内テニス

「くるみが頑張っているから、自分も頑張ろうとずっと思ってきた」土居美咲と奈良くるみ、コート上で今までの関係性を語リ合う<SMASH>

内田暁

2022.09.23

「くるみとやってこれたことは、選手として幸せだった」と奈良くるみに想を伝える土居美咲。写真:田中研治(THE DIGEST写真部)

「くるみとやってこれたことは、選手として幸せだった」と奈良くるみに想を伝える土居美咲。写真:田中研治(THE DIGEST写真部)

 対する奈良が覚えている土居の第一印象は、実際の出会いから1~2年後。14歳以下選手の強化遠征で、ヨーロッパに旅立った日のことだ。

「みっちゃんは……今でこそアレですが、昔は人見知りがすごかったので。最初は、この子と仲良くなれるのかなと不安になった、成田空港での遠征の待ち合わせをすごく覚えています」

 はたして、空港で会った時の挨拶もそこそこ。飛行機の中でも一言も話すことのない、不安的中の遠征のスタートとなる。ただその後の5~6週間の遠征を通じ、「本当に仲良くなった」と二人は声を重ねた。

「何よりその当時から、テニスの考え方や価値観が、この子とは合うなーというのが印象に残っていて。13歳からずっと一緒ですが、そこからすごく二人で成長できてきたかなと思います」

 奈良が声を弾ませれば、「そこから切磋琢磨というか、くるみが頑張っているから自分も頑張ろうとずっと思ってきた」と土居が続ける。

「くるみとずっとやってこられたことは、選手として幸せだったな」。今や言葉も表情でも内面表現が豊かになった、かつての“人見知りの子”は、万感の想いを一語一語に丁寧に乗せた。
 
 奈良から、最後のダブルスパートナーの依頼を受けた時から、土居は、「どんな感じでこの試合を迎えるのだろう」と、ずっと考えてきたという。

「感傷的になり、ちゃんと試合になるのかな?」そんな不安も抱いたが、いざコートに立った時には、感傷に浸る暇もないほどに、二人で勝利を模索した。

「終わっちゃったな……。いつか終わる時が来るとは思っていたんですが、最後のダブルスで、最後のポイントまで諦めないで勝ちを信じて戦い抜けたのは、わたしたちらしいなって」。声を震わせ振り絞った土居の言葉が、共に歩んできた17年の日々を、色濃く浮かび上がらせた。

 9月21日が、競技者としての奈良の最後の日になったが、テニス人としての道は途絶えはしない。土居はこの先もまだ当分、競技者として自分の可能性を、そしてテニスの楽しみを探求し続けていくだろう。

「選手生活は終わりますが、これからもテニスに関わって、またみなさんにお会いできたらと思います」

 引退セレモニーの最後に、奈良は集った多くのファンに、そして門出を見送る仲間の選手たちに約束した。形や関係性は変わりながらも、二人の肩を並べながらの旅は、この先も続いていく。

取材・文●内田暁

【PHOTO】奈良くるみのコースを狙ったサービス、ハイスピードカメラによる『30コマの超分解写真』
 

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号