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国内テニス

日本女子代表の新エース内島萌夏、注目の21歳を大きく羽ばたかせた「あの時の誓い」<SMASH>

内田暁

2022.11.22

プロとして戦っていくきっかけを与えた奈良くるみ(写真左)は、内島にとって大きな目標でもある。写真:内田暁

プロとして戦っていくきっかけを与えた奈良くるみ(写真左)は、内島にとって大きな目標でもある。写真:内田暁

 そんな21歳の内面を誰よりも理解し、寄り添い、言葉を掛けたのは、自身も似た経験を持つ奈良だった。

「私も2014年に、フェドカップで初めてシングルス1としてアルゼンチンと戦った時に連敗したんです。その時は本当にへこんで、数日はホテルの部屋にこもっていました」と奈良が回想する。

 コートに立つのはおろか、人と会うことも心が拒むほどに落ち込んだ数日間。その翌週に出場予定だったリオデジャネイロのツアー大会も、「出たくない」とコーチに訴えたほどだ。

 ところが、自分に期待せず出場したそのリオ大会で、彼女は初のツアー優勝を成す。

「その時のわたしの経験を、BJKカップが終わった日の夕食の時に、萌夏ちゃんにも話したんです。そういうこともあるよって」

 敬愛する奈良の言葉は、内島に力を与えただろうか。

「決勝に行きます」

 奈良にそう約束して向かった安藤証券オープンで、内島は4つの快勝を連ねて決勝へと勝ち上がる。頂上対決では、ジュニア時代からよく知る同期で87位のワン・シンユにフルセットで敗れるも、「先週のBJKカップでの反省を生かせたかな」と充実感も示した。
 
 彼女のいう「BJKカップでの反省点」とは、0-6、3-6で敗れたマルタ・コスチュク戦から持ち帰ったもの。その時は、「対応策を見つけるのが遅すぎた」と悔いたが、今回は第1セットを落とした直後に、自身のサービスゲームを修正する。

「途中から自分のポイントパターンも見つけられた。もっと『こうすれば良かった』と思う点はありますが、ファーストセットの後に直ぐ切り替えられたのは良かったなと思います」

 求めた優勝は逃したものの、キャリアでも1~2の辛い敗戦を糧とできたことに、彼女は安堵している様子だった。

 443位で始まった今シーズンを104位で走り終えた内島は、しばし心身を休めた後、東南アジアでの合宿に向かう。3年前から中国のテニスアカデミーを拠点とする内島は、その基本体制は変えないながらも、今後は奈良のコーチを長く務めた原田夏希らのサポートも受けていく予定だ。恐らくは、奈良から助言を得る機会も、これまで以上に増えるだろう。

「奈良さんのように、世界で活躍する選手になりたいです」

 そう誓ったあの日に生まれた、プロの夢と人との機縁。今重なる因果の糸を紡ぎながら、内島萌夏の真の戦いがここから始まる。

取材・文●内田暁

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