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国内テニス

【SBCドリームテニス】杉田祐一と西岡良仁、互いに交錯する足跡の先に見えるもの<SMASH>

内田暁

2022.12.11

2017年にはツアー初タイトルを手に入れ自己最高となる36位まで上り詰めた(写真)。身体的にはあの頃とあまり変わっていないと感じる杉田だが…。(C)Getty Images

2017年にはツアー初タイトルを手に入れ自己最高となる36位まで上り詰めた(写真)。身体的にはあの頃とあまり変わっていないと感じる杉田だが…。(C)Getty Images

 実際に2人は同じトレーナーに師事し、互いの姿をモチベーションとした。

 杉田がトップ100の壁を破ったのは、西岡のそれと同時期の2016年。時に西岡、21歳。杉田は27歳である。杉田がATPツアー初優勝を手につかみ、キャリアハイにも至ったのは、それから約1年後だった。

 その杉田が今、「心も身体も、テニスにうまく向き合えていない」と、苦しそうにつぶやく。

「心も身体も、行くぞという勢いが今の自分には足りていない。練習だと気持ちよくプレーできているし、トレーニングでもしっかり追い込めている。36位に行った2017年と比べて身体の状態がどうかと言ったら、僕は全然いけると思っているし、トレーナーや周りの人も、テニスとフィジカルは問題ないと正直に話してくれている」

「ただそれ以上に心の部分で、すごく迷いながら自信のない状態で試合をしている。それは、ブランクがかなり大きいですね」
 
 常に戦いに身を置いてきた中で、一度戦線を離れ戻ってくると、どうしても周囲のスピードについていけない。その現状を杉田は、「一度止まった状態から、高速道路にいきなり突っ込んでいるようなもの」だと例えた。

 猛スピードで走る車のレーンに割り込むには、「ものすごいアクセル」が求められ、そのためには「今までとは比べ物にならないエネルギーが必要」だと杉田は自覚する。

 そのエネルギーを、どこから得られるのか――?

「自分自身のために頑張るというのは、凄く難しくなっている」と杉田は言う。

「何かを残すことができればと色々探したんですが、そこはすごく難しいですね。自分自身の限界を追うことに疲れているというか、どれだけ険しい道だったかは十分わかっているので。同じ道みたいに考えてしまうと、足踏みになる。違う道、違う生き方で行かなくてはいけない」

 人生観とテニスキャリアを同義と捉える彼は、「今は、自分がこれまで歩いてきたテニスの道を残すことに専念した方が、すっきり前に進めるのかな」と言葉を絞り出した。

 杉田が抱えるこの苦悩を、誰より感覚的に理解できるのは、この日ネットを挟み対峙した、西岡なのかもしれない。
 
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