今大会が本戦初参戦の綿貫と対極の立場に居たのが、これが26度目の本戦の舞台となる西岡良仁だ。
現在の世界ランキングは、キャリア最高の33位。今大会には自身初、日本人男子としては史上2人目のシード選手として参戦した。
大会開幕の数日前は、「1回戦でナダルやジョコビッチと当たることはないと思うと、すごくリラックスできている」と余裕の笑み。
ところが初戦前日の練習の頃から、「緊張を感じた」という。
「勝てるかどうかというよりも、その中で勝たないといけないっていうプレッシャー」
それはその地位に立ち、初めて知る重みだった。
試合序盤は重圧から、「ちょっとビビッて前に出られない」局面もあったという。相手のマイケル・イーマーが「ミスの少ない選手」ということもあり、自分から攻めなくてはとの焦りもあった。
それでも、「フォアのクロスで振っている間は、自分が劣勢になることはない」との自信が、試合プランに一本の軸を通す。やや苦しみながらも第1セットを取ると、地力に勝る西岡に余裕が生まれた。
最終スコアは6-4、6-2、7-5。“シード選手”西岡が、貫録の勝利をつかみ取った。
綿貫が初勝利をあげ、西岡が優勢に試合を進める最中に、コートに向かったのがダニエル太郎である。
現在、94位。ただ、前哨戦のオークランドでは470位の地元選手に敗れ、苦しい精神状態で今大会に挑んでいた。
初戦で当たったエルネスト・エスコベードは313位の予選上がりではあるが、それは、勢いある選手であることも意味する。
立ち上がりから互角の攻防が繰り広げられるが、結果的に1時間を要した第1セットを取り切ったことで、ダニエルが勝者の権利を手にした。スコアは7-5、6-2、3-6、6-3。勝利の瞬間、両ヒザをコートについて天を仰ぐ歓喜の姿が、数字以上に苦しい戦いだったことを物語っていた。
「僕もあと2週間で30歳。もう若手じゃない」
試合後にそう語る彼は、「時の流れを感じている時期かもしれない」と苦く笑った。
現在はテニスの方向性やチーム編成も含め、「自分で決断を下すべき時」と自覚している。
昨年の夏には、西岡がランキングを落としたこともあり、日本人男子1位につけた。その事実が自分でも、「意外なまでにうれしかった」という。
ただその喜びは、周囲との比較を気にするがゆえ。その後の西岡の活躍や綿貫の躍進に、どこかで心の疼きを覚えたという。
悩みを成長の痛みと自覚しながら、20代最後の日々を踏みしめて、ダニエルが2回戦へと歩みを進めた。
現地取材・文●内田暁
【画像】若手の星・綿貫陽介のサービス、ハイスピードカメラによる『30コマの超分解写真』
現在の世界ランキングは、キャリア最高の33位。今大会には自身初、日本人男子としては史上2人目のシード選手として参戦した。
大会開幕の数日前は、「1回戦でナダルやジョコビッチと当たることはないと思うと、すごくリラックスできている」と余裕の笑み。
ところが初戦前日の練習の頃から、「緊張を感じた」という。
「勝てるかどうかというよりも、その中で勝たないといけないっていうプレッシャー」
それはその地位に立ち、初めて知る重みだった。
試合序盤は重圧から、「ちょっとビビッて前に出られない」局面もあったという。相手のマイケル・イーマーが「ミスの少ない選手」ということもあり、自分から攻めなくてはとの焦りもあった。
それでも、「フォアのクロスで振っている間は、自分が劣勢になることはない」との自信が、試合プランに一本の軸を通す。やや苦しみながらも第1セットを取ると、地力に勝る西岡に余裕が生まれた。
最終スコアは6-4、6-2、7-5。“シード選手”西岡が、貫録の勝利をつかみ取った。
綿貫が初勝利をあげ、西岡が優勢に試合を進める最中に、コートに向かったのがダニエル太郎である。
現在、94位。ただ、前哨戦のオークランドでは470位の地元選手に敗れ、苦しい精神状態で今大会に挑んでいた。
初戦で当たったエルネスト・エスコベードは313位の予選上がりではあるが、それは、勢いある選手であることも意味する。
立ち上がりから互角の攻防が繰り広げられるが、結果的に1時間を要した第1セットを取り切ったことで、ダニエルが勝者の権利を手にした。スコアは7-5、6-2、3-6、6-3。勝利の瞬間、両ヒザをコートについて天を仰ぐ歓喜の姿が、数字以上に苦しい戦いだったことを物語っていた。
「僕もあと2週間で30歳。もう若手じゃない」
試合後にそう語る彼は、「時の流れを感じている時期かもしれない」と苦く笑った。
現在はテニスの方向性やチーム編成も含め、「自分で決断を下すべき時」と自覚している。
昨年の夏には、西岡がランキングを落としたこともあり、日本人男子1位につけた。その事実が自分でも、「意外なまでにうれしかった」という。
ただその喜びは、周囲との比較を気にするがゆえ。その後の西岡の活躍や綿貫の躍進に、どこかで心の疼きを覚えたという。
悩みを成長の痛みと自覚しながら、20代最後の日々を踏みしめて、ダニエルが2回戦へと歩みを進めた。
現地取材・文●内田暁
【画像】若手の星・綿貫陽介のサービス、ハイスピードカメラによる『30コマの超分解写真』