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海外テニス

初陣の綿貫陽介、シードの西岡良仁、転換期のダニエル太郎、3人が明かした全豪オープン1回戦勝利の過程<SMASH>

内田暁

2023.01.17

日本人男子として史上2人目のシード選手として登場した西岡良仁は重圧を感じながらもしっかりと勝ち切った。(C)Getty Images

日本人男子として史上2人目のシード選手として登場した西岡良仁は重圧を感じながらもしっかりと勝ち切った。(C)Getty Images

 今大会が本戦初参戦の綿貫と対極の立場に居たのが、これが26度目の本戦の舞台となる西岡良仁だ。

 現在の世界ランキングは、キャリア最高の33位。今大会には自身初、日本人男子としては史上2人目のシード選手として参戦した。

 大会開幕の数日前は、「1回戦でナダルやジョコビッチと当たることはないと思うと、すごくリラックスできている」と余裕の笑み。

 ところが初戦前日の練習の頃から、「緊張を感じた」という。

「勝てるかどうかというよりも、その中で勝たないといけないっていうプレッシャー」

 それはその地位に立ち、初めて知る重みだった。

 試合序盤は重圧から、「ちょっとビビッて前に出られない」局面もあったという。相手のマイケル・イーマーが「ミスの少ない選手」ということもあり、自分から攻めなくてはとの焦りもあった。

 それでも、「フォアのクロスで振っている間は、自分が劣勢になることはない」との自信が、試合プランに一本の軸を通す。やや苦しみながらも第1セットを取ると、地力に勝る西岡に余裕が生まれた。

 最終スコアは6-4、6-2、7-5。“シード選手”西岡が、貫録の勝利をつかみ取った。
 
 綿貫が初勝利をあげ、西岡が優勢に試合を進める最中に、コートに向かったのがダニエル太郎である。

 現在、94位。ただ、前哨戦のオークランドでは470位の地元選手に敗れ、苦しい精神状態で今大会に挑んでいた。

 初戦で当たったエルネスト・エスコベードは313位の予選上がりではあるが、それは、勢いある選手であることも意味する。

 立ち上がりから互角の攻防が繰り広げられるが、結果的に1時間を要した第1セットを取り切ったことで、ダニエルが勝者の権利を手にした。スコアは7-5、6-2、3-6、6-3。勝利の瞬間、両ヒザをコートについて天を仰ぐ歓喜の姿が、数字以上に苦しい戦いだったことを物語っていた。

「僕もあと2週間で30歳。もう若手じゃない」

 試合後にそう語る彼は、「時の流れを感じている時期かもしれない」と苦く笑った。

 現在はテニスの方向性やチーム編成も含め、「自分で決断を下すべき時」と自覚している。

 昨年の夏には、西岡がランキングを落としたこともあり、日本人男子1位につけた。その事実が自分でも、「意外なまでにうれしかった」という。

 ただその喜びは、周囲との比較を気にするがゆえ。その後の西岡の活躍や綿貫の躍進に、どこかで心の疼きを覚えたという。

 悩みを成長の痛みと自覚しながら、20代最後の日々を踏みしめて、ダニエルが2回戦へと歩みを進めた。

現地取材・文●内田暁

【画像】若手の星・綿貫陽介のサービス、ハイスピードカメラによる『30コマの超分解写真』
 
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