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海外テニス

【レジェンドの素顔15】10代で五輪と全仏を制したグラフ。しかし指導者でもある父親の存在が…│後編<SMASH>

立原修造

2023.12.27

父親の評判が悪くなり、グラフにも影響が…。写真:スマッシュ写真部

父親の評判が悪くなり、グラフにも影響が…。写真:スマッシュ写真部

 彼の評判が、このところすこぶる悪いのだ。いわく、試合中にグラフにサインを出すのはルール違反だ。いわく、金銭面にうるさい。いわく、図に乗りすぎている、など。こうした批判はグラフにとっても決して好結果をもたらさない。

 どんなに親孝行の娘でも、やがては親元を離れていく。その自立が、娘を一回りも二回りも成長させるのである。グラフの大成にペーターが果たした役割はあまりに大きかったが、いつまでも親が心配そうにつきまとっていたら、精神面で甘えが生じてしまう。その甘えが、やがて心の“隙”になる。

 エバートの例を引こう。彼女もまたティーチングプロだった父親にテニスを教わった。しかし、エバートがプロ入りしてから、父親は口を出さなくなった。自分の役割は終わったというわけである。ドイツのことわざに言う。
 
――猿は高く登れば登るほどお尻を見せる、と。これは、成り上がった者が図にのることをいましめていることわざだ。何ごとも引き際が肝心ということだ。ペーターは幸運な成功者になった。しかし、その幸運を長く保つためには、自ら身を引いて信頼できる人物にグラフをゆだねた方がいいのでは――。

 思えば、グラフはテニス界が久々に生んだフォアハンドの名手である。その彼女が真に “父離れ”できた時、その精神的自立によって、フォアハンドはさらに極められていくに違いない。大いなる可能性を秘めたグラフへの期待は高まる一方なのである。

文●立原修造
※スマッシュ1987年10月号から抜粋・再編集
(この原稿が書かれた当時と現在では社会情勢等が異なる部分もあります)

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