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海外テニス

【レジェンドの素顔17】半年間で家にいたのが1日!?体重増加!?“少女グラフ”の過酷な選手生活│中編<SMASH>

立原修造

2024.12.29

グラフは生活を改めなければならない状態になっていた。写真:スマッシュ写真部

グラフは生活を改めなければならない状態になっていた。写真:スマッシュ写真部

滅茶苦茶な生活だけは改めなくてはならない

 元来、彼女はダイエットに気を配るほうではなかった。さらに気がかりなのは「スパゲティーをたくさん食べるようにしている」点だ。このスパゲティーというのが問題。

 イタリア人は前菜にスパゲティー1人前を平気でたいらげる。そのあと、メインディッシュとしてボリュームたっぷりの肉や魚。デザートには山のようなチーズとアイスクリームを食べる。日本人からは考えられない大食漢ぶりだが、その根底にはスパゲティーがある。グラフはイタリア人ではないが、スパゲティーを主食にしていることに変わりはない。このスパゲティーが食を促進させるのだ。

 かつてナブラチロワも10代の頃、食生活が乱れたことがあった。ハンバーガーの食べすぎでまるまる太り、ベスト体重を10キロもオーバーする有様だった。当然、成績は不振をきわめた。グラフの場合、もちろんそこまで至っていないし、兆候はわずかだ。しかし、全米オープン決勝を見るかぎり楽観は許されない。

 ナイターで行なわれたあの一戦は、視力で衰えるナブラチロワに不利だった。それにもかかわらず、グラフは武器であるフォアハンドストロークのミスを連発させた。足が重く、ボールに十分届いていなかった。それなのに無理な体勢から打つケースが目立った。これでは勝てるわけがない。

 わずか3、4キロ程度の体重オーバー、と言うことなかれ。試しに、3キロの重りを持って走ってみるといい。足は動かないし、すぐに息切れしてしまうだろう。
 
 ナブラチロワはかつて、スポーツ栄養学の専門家の指示に従い、コンピューターによる効果的なダイエットメニューによって甦った。グラフの場合、そこまでやる必要もないだろうが、せめて規則的な食生活と適度な量によってベスト体重を常に維持する努力はすべきである。

 と同時に、ある意味では食生活を乱す元凶にもなっている心の苛立ちに、上手に対処していかなければならない。何人もの有望な少女が自分の気持ちをうまくコントロールできずにバーンアウトしてしまった事実を、グラフもよく知っているだろう。

 無理のないスケジュールを立て、適度にリラックスする時間をもつこと。せめて、半年間で家にいたのが1日、という滅茶苦茶な生活だけは改めなくてはならない。

~~後編へ続く~~

文●立原修造
※スマッシュ1987年12月号から抜粋・再編集
(この原稿が書かれた当時と現在では社会情勢等が異なる部分もあります)

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