第3セットに入っても落ちぬティアフォーのサービスに、綿貫は「予想以上に圧力を感じた」という。試合が進むにつれ、自身の勝機が薄れていくのも、恐らくは感じていただろう。
それでも彼に、試合を諦める気配は、まるでなかった。一度はブレークバックし、スコアを五分に戻す。幾度も危機を切り抜け、マッチポイントをフォアのウイナーで跳ね返す綿貫の姿は、ティアフォー一色だったスタンドの色を確実に塗り替えていく。2時間46分の熱戦を終えた時、総スコアは118対116でティアフォーがわずかに2本リード。総ウイナー数は、55対34と綿貫が大きく上回った。
試合後の綿貫は、つかめたかもしれない勝利を逃した悔しさと、それでも埋められなかった世界トップとの差を、冷静に受け止めているようだった。
体力の限界に近づきながらも、幾度も危機を凌いだ終盤の粘りについて触れると、「それが僕の仕事ですから」と、淡々と答えた。
その「僕の仕事」への真摯な姿勢が、観客の心を確実につかんだ事実にも、彼は気付いていたという。
「コートに入った瞬間は、ティアフォー選手への声援が8割くらいで、僕は5パーセントくらいの感じ。『大丈夫かな?』と不安になったけれど、最後は半々とは言わないまでも、4割くらいは自分を応援してくれたのではと思います」
惜敗のコートから持ち帰ったのは、「このレベルでも戦える」という手応えと、日付を越えても席を立つことなく、熱狂的な声援を送ってくれた観客との繋がり。それらは手にした41のランキングポイントよりも、はるかに大きいはずだ。
現地取材・文●内田暁
【画像】ハイスピードカメラが捉えた綿貫陽介のサービス『30コマの超分解写真』
それでも彼に、試合を諦める気配は、まるでなかった。一度はブレークバックし、スコアを五分に戻す。幾度も危機を切り抜け、マッチポイントをフォアのウイナーで跳ね返す綿貫の姿は、ティアフォー一色だったスタンドの色を確実に塗り替えていく。2時間46分の熱戦を終えた時、総スコアは118対116でティアフォーがわずかに2本リード。総ウイナー数は、55対34と綿貫が大きく上回った。
試合後の綿貫は、つかめたかもしれない勝利を逃した悔しさと、それでも埋められなかった世界トップとの差を、冷静に受け止めているようだった。
体力の限界に近づきながらも、幾度も危機を凌いだ終盤の粘りについて触れると、「それが僕の仕事ですから」と、淡々と答えた。
その「僕の仕事」への真摯な姿勢が、観客の心を確実につかんだ事実にも、彼は気付いていたという。
「コートに入った瞬間は、ティアフォー選手への声援が8割くらいで、僕は5パーセントくらいの感じ。『大丈夫かな?』と不安になったけれど、最後は半々とは言わないまでも、4割くらいは自分を応援してくれたのではと思います」
惜敗のコートから持ち帰ったのは、「このレベルでも戦える」という手応えと、日付を越えても席を立つことなく、熱狂的な声援を送ってくれた観客との繋がり。それらは手にした41のランキングポイントよりも、はるかに大きいはずだ。
現地取材・文●内田暁
【画像】ハイスピードカメラが捉えた綿貫陽介のサービス『30コマの超分解写真』