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海外テニス

「あそこで取らなければ…」綿貫陽介が世界14位ティアフォーに惜敗も「このレベルで戦える」と手応え<SMASH>

内田暁

2023.03.27

自分の出せる力を全てぶつけて戦い切った綿貫は敗れたとはいえ確かな手応えをつかんだようだ。(C)Getty Images

自分の出せる力を全てぶつけて戦い切った綿貫は敗れたとはいえ確かな手応えをつかんだようだ。(C)Getty Images

 第3セットに入っても落ちぬティアフォーのサービスに、綿貫は「予想以上に圧力を感じた」という。試合が進むにつれ、自身の勝機が薄れていくのも、恐らくは感じていただろう。

 それでも彼に、試合を諦める気配は、まるでなかった。一度はブレークバックし、スコアを五分に戻す。幾度も危機を切り抜け、マッチポイントをフォアのウイナーで跳ね返す綿貫の姿は、ティアフォー一色だったスタンドの色を確実に塗り替えていく。2時間46分の熱戦を終えた時、総スコアは118対116でティアフォーがわずかに2本リード。総ウイナー数は、55対34と綿貫が大きく上回った。

 試合後の綿貫は、つかめたかもしれない勝利を逃した悔しさと、それでも埋められなかった世界トップとの差を、冷静に受け止めているようだった。
 
 体力の限界に近づきながらも、幾度も危機を凌いだ終盤の粘りについて触れると、「それが僕の仕事ですから」と、淡々と答えた。

 その「僕の仕事」への真摯な姿勢が、観客の心を確実につかんだ事実にも、彼は気付いていたという。

「コートに入った瞬間は、ティアフォー選手への声援が8割くらいで、僕は5パーセントくらいの感じ。『大丈夫かな?』と不安になったけれど、最後は半々とは言わないまでも、4割くらいは自分を応援してくれたのではと思います」
 
 惜敗のコートから持ち帰ったのは、「このレベルでも戦える」という手応えと、日付を越えても席を立つことなく、熱狂的な声援を送ってくれた観客との繋がり。それらは手にした41のランキングポイントよりも、はるかに大きいはずだ。

現地取材・文●内田暁

【画像】ハイスピードカメラが捉えた綿貫陽介のサービス『30コマの超分解写真』
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