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国内テニス

世界へ挑戦したい選手たちの“スポンサー”や“支度金”問題――土居美咲を育てたTEAM自由が丘の活動

内田暁

2019.12.25

チーム自由が丘発起人の栗山雅則氏と土居美咲、同じくチーム自由が丘の藤田秀丸氏(左から)。写真:安藤証券オープン

チーム自由が丘発起人の栗山雅則氏と土居美咲、同じくチーム自由が丘の藤田秀丸氏(左から)。写真:安藤証券オープン

 1年目で600位台までランキングを上げたその選手は、2年目を迎えた懇親会で、支援者たちを前に「今年は200位が目標です」と宣言した。彼女が公約を守るように、そのシーズンを199位で終えたことを、栗山はよく覚えている。そして翌年は、「グランドスラム本戦出場」を約束し、その年のローランギャロスで予選を勝ち上がった。

「有言実行で、すごい子だなと思いました。物事をしっかり考え、自分の意見を伝える勉強にもなったと思います。色んな人に会うので、プロであることを認識せざるを得ない状況にもありますから」と、栗山は約10年前を思い返す。

「支援してくださっている方たちと多く出会うので、励みにもなりました」と当時を回顧するその2期生――土居美咲――が、支援3年目で全日本選手権を制し、その後は自らの力で世界へと羽ばたいたのは周知の通りだろう。

 土居がTEAM自由が丘を卒業した後も、彼女の活躍がメディア等で報じられると、栗山は商店街などで、「土居さん、がんばってますね!」とうれしそうな声を多く聞いたという。

「その時は、『皆さんのお陰です。皆さんのご支援のお陰で、あそこまで行ったのだと思って下さい』と伝えました。自分の払った1万円が役立っていると実感できるのが、このようなファンディングならではの良さだと思います」。
 
 こうして、自由が丘に築き上げた一つのムーブメントを伝統へと根付かせるべく、彼らは土居の後も、牟田口恵美、宮原未穂希、安藤優希、そして今年からは西郷里奈へと、支援のトーチを繋いでいる。4歳年長の姉・幸奈がプロとして戦う背を中学生の頃から見てきた西郷は、この世界がいかに厳しいかを重々に承知してた。そのうえで、自らも姉と同じ道を歩む彼女は、早い時期から海外を転戦する必要性も感じていたという。

「姉には、やはり海外に行かなくては、強くなれないと言われていました。実際に海外の選手とは、サービス力の差を凄く感じています」

 身をもって世界のテニスを知った彼女は、「これだけ1年目から海外行けるとは予想していなかったので、チーム自由が丘の支援は本当にありがたいです」と笑みをこぼした。海外転戦を通じ、何が持ち味で何が足りないかを知った彼女は、来季はフィジカル強化にも重点的に取り組む予定だという。

「TEAM自由が丘の3年が終わる前に、グランドスラムには行きたいなと思っています」

 地元から世界へ――。そう願い応援してくれる人々の想いを背に、夢へと続く順路を思い描き、その道を歩んでいく。

取材・文●内田暁
 

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