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海外テニス

テニス選手の言葉を瞬時に文字に起こす速記者!「1分間に260ワードを打つ」キャリア18年のプロに聞く<SMASH>

内田暁

2024.06.01

速記に特化した特別なタイプライターを駆使して、あらゆる選手の会見に立ち会っているリンダさん。写真=内田暁

速記に特化した特別なタイプライターを駆使して、あらゆる選手の会見に立ち会っているリンダさん。写真=内田暁

 テニスを中心にスポーツ現場で長く働くリンダさんだが、ステノグラファーのキャリアの始まりは、さらに遡る。

「私は最初、法律関係の現場でこの仕事を始めました。裁判では、裁判官に弁護士、原告や被告らの言葉を、逐一全て記録します。さらには証言録取のため、あらゆる法律事務所や病院などに行き、証人の言葉を記録することもしました」

 それら法律の職に従事した後、今度は「キャプショニング」へと転向する。これは、聴覚障害を抱える人のため、テレビモニターなどに字幕を表示する仕事。ただ彼女はその中でも、「アカデミックな現場」で働いたという。

「大学に行き、聴覚障害のある学生の隣に座り、講義の内容を全てモニターに表示する仕事をしました。一語も逃すことなく文字にして、学生の“耳”になるんです」
 
 そのような職歴を重ねた後に、ASAP社に移ったのが18年前のこと。ASAP社は、多種多様なスポーツの会見速記を引き受ける企業。テニス部門の拡張に伴い、リンダさんに声が掛った。子どもの頃からテニスが好きだったリンダさんは、喜んで引き受けたという。

「私はテニスが好きだし、旅が好き。それに、言葉を聞くのも好きなんです。世界中、色んな国に行き、色んな国の人たちが語る英語を聞くのが、すごく楽しいんです」

 そう笑うリンダさんが、1年で訪れる大会数は、20を超える。取材者たちも多くの会見に参席するが、思えばリンダさんほど多くの大会会場を訪れ、あらゆる選手の会見に立ち会った者は、いないだろう。会見室の一角でステノタイプを叩きながら、彼女は選手の表情を眺め、言葉や声色の変化を感知し、選手の成長を見守ってきた。
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