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海外テニス

テニス選手の言葉を瞬時に文字に起こす速記者!「1分間に260ワードを打つ」キャリア18年のプロに聞く<SMASH>

内田暁

2024.06.01

印象に残っているのは元世界1位のサフィン(左)。最近ではサバレンカ(右)が魅力的だという。(C)Getty Images

印象に残っているのは元世界1位のサフィン(左)。最近ではサバレンカ(右)が魅力的だという。(C)Getty Images

「ラファは、とても印象に残る選手ですね。最初の頃はあまり英語が話せなかったけれど、どんどん上達して。でも、ケガなどで長く故郷のマヨルカに戻ると、少し後退しちゃったりするんですよ。

 面白くて魅力的という意味では、マラト・サフィンは素晴らしかった。あとは、ラトビアのエルネスツ・グルビス。彼はとても頭がよく、鋭かったですね。最近では、アリーナ・サバレンカも魅力的。彼女は時に失言して、自分の発言に自分で笑っちゃったりしています」

 思い出深い選手を列挙するリンダさんは、日本の選手と言えば……と、「キミコ・ダテ」の名を口にした。

「キミコが復帰した時は、多くの記者が集まりました。彼女は喋るのが好きで、どの質問にも長く答えていた。特に忘れられないのが、英国のベテラン記者が彼女に、『引退していた間、何をしていのか?』と質問した時。キミコは『最初の年は、こうだった。2年目はこんなことをして……』と、10年くらいを振り返りはじめたの。それをタイプし続ける私は大変! だからその英国記者には、『あなたは金輪際、キミコへの質問は禁止!』って冗談で叱ったのよね」
 
 それら数多の選手の言葉を観察する中で、リンダさんは「1つの傾向を感じている」とも言った。

「やはりどの選手も、ベテランになると人間的に成熟し、周囲の人たちの役割や仕事を知り、メディアの重要性も理解する。だから会見でも、興味深いコメントを残すようになりますね」

 それは、会見室の一角で、定点観測のように多くの選手の“言葉”を見てきた彼女だからこそ、知りえる真理だろう。

 会見を重ねるたび、選手たちは自らが発する言葉の重みを知り、そこに関わる人々の重要性も理解していく。

 もちろん、自分の言葉を形として残してくれる、よく知るその人の大切さも――。

現地取材・文●内田暁

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