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海外テニス

かつてプロ選手を目指していた“テニス漫画家”が全仏オープン初観戦!憧れの地で手にしたのは「特別な経験」<SMASH>

スマッシュ編集部

2024.06.13

写真左上:ベースラインから約6メートル後方でリターンを構えるアルカラス、同右上:会場は連日多くのファンで賑わった、同左下:FFTから贈られたローランギャロスの赤土、同右下:著者が修業時代に撮ったギレルモ・コリアとのツーショット。写真:KASA氏提供

写真左上:ベースラインから約6メートル後方でリターンを構えるアルカラス、同右上:会場は連日多くのファンで賑わった、同左下:FFTから贈られたローランギャロスの赤土、同右下:著者が修業時代に撮ったギレルモ・コリアとのツーショット。写真:KASA氏提供

 フランスまでは飛行機で約15時間かかり、全仏の会場となるローランギャロスは空港から車で約1時間の場所にありました。

 会場に入り最初に目に入ったのが、優勝14回を誇るラファエル・ナダル(スペイン)のステンレス像です。絵を描く時に、躍動感や立体感を出すために重要なのが服のシワなのですが、この像のシワは、まさにそれが完璧に表現されていました。さらにポケットに入っているボールによってできたシワの形。このシワがあることでナダルがファーストサービスを入れて、その後に、回り込みのフォアハンドを打った、その瞬間なんだと想像を掻き立てます。

 今年のラーランギャロスは例年よりも観客が多く、席を取るのも難しいほどだったそうです。オフィシャルショップも長蛇の列で、人気のローランギャロスのグッズは売り切れ続出でした。

 私が観たのは、男子シングルスの準決勝と決勝で、もちろん超満員でした。初めての観戦でまず驚いたのが、地響きのような歓声。そして一球一球に会場が、ざわめいたり、どよめいたり…。選手のワンプレーごとに、会場中の観客が一喜一憂するその空間が、まるで一つのアトラクションを体験しているように感じました。

 かつてナダルが現代のテニスを「パワーとスピードの時代」と語ったように、球足の遅いレッドクレーでもハードコートでプレーしているかのように感じるほどのスピード感。私が一番思い出に残っている04年のローランギャロスとは、まるで別物でした。しかも、ただ速いだけじゃなく、それに加えてうまさもある。とにかく異次元のテニスでした。
 
 観戦をしていて気づいたのは、パワーとスピード化によって選手のポジションが昔よりもかなり後方になったことです。それにより、ドロップショットが効果的なショットになり前後に揺さぶる展開が多く観られました。

 昔のテニスは、もっとじっくりと組み立てて攻撃をする、つまりニュートラルな状況での駆け引きが多かったのですが、現代は守備から攻撃の移行が早く、ニュートラルでの駆け引きが少ない印象を受けました。それはそれでエキサイティングではあるのですが…、余白のなさの寂しさもありました。

 主導権を握って展開し、優位な状況で攻めても、相手のコートカバーリング力が高く、切り返し(逆転のショット)を打たれる。それが、高い確率で決まるので、その切り返しを打たれるのが前提で、組み立てをしていたり…。切り返しに対して、さらに切り返して、またそれを切り返すような、最終的に駆け引きではなく、フットワークとボールをコートにねじ込む感覚の勝負になっていたのが、驚きでした。

 あるプロ選手が「子どもの時に四大大会を現地で観ていたら、きっと意識が変わって強くなれたと思う」と言っていたのが印象的で、今回の観戦で、その言葉の意味が少しわかったような気がしました。

 最高峰の舞台で、最高峰の選手の戦い…。

「この舞台で戦いたい」

 その気持ちが、日常の振る舞いだったり、練習での意識だったり、あらゆるものを変えてしまうんだと、そう感じました。

 今回の観戦は、漫画家としても特別な経験となりました。

現地取材・文●KASA

KASA(カサ):高校テニスを題材にした漫画『BREAK BACK』(秋田書店)の著者。名手ギレルモ・コリアに憧れアルゼンチンに武者修行に行き、コリア本人から直接指導を受けた経験を持つ。選手活動とコーチ業を経て、現在は漫画家としてテニスの魅力を伝えている。

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