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海外テニス

スタンドも大興奮!世界349位の綿貫陽介が元10位ティアフォーをストレートで破り「BNPパリバ・オープン」ベスト16進出<SMASH>

内田暁

2025.03.11

綿貫は乾いたスポンジのようにレジェンドコーチのフェレイラ氏(右)から、自身の成長を促す様々なエキスを吸収している。(C)Getty Images

綿貫は乾いたスポンジのようにレジェンドコーチのフェレイラ氏(右)から、自身の成長を促す様々なエキスを吸収している。(C)Getty Images

 なぜ、あの緊迫の局面でペプシを要求したのか?

 純粋なその問いに「いや、本当にセカンドセットはきつくて」と、綿貫は目を細め笑いながら、こう続けた。

「さすがに予選から5試合目ですし、最近そんなに試合数をこなせていなかった中で、1日空くとはいえこのレベルでやるのは結構キツくて。ちょっと疲れたなと思ってた時に、ウェインが『現役の時、ファイナルセットに入ったらペプシを飲んだりして糖分を補給した』って話していたことを思い出したんです。それで、真似してやろうと思って。彼に『ペプシだぞ』って見せたら、『やれやれ!』って言うから、飲みました」

 なるほど、あのペプシ缶をかざす仕草は、ボックスに座るコーチへの「飲むからね~」というメッセージだったのだ。そして何を隠そう、今大会から綿貫のボックスに座るこの人物こそ、1年前までティアフォーのコーチを務めた、ウェイン・フェレイラ。自身も選手としてシングルス6位、ダブルス9位に達した、レジェンドコーチである。

 今大会からタッグを組んだこの名伯楽を、綿貫がいかに信頼し好いているかは、会見で語る言葉や表情、そしてコート上で放つ『陽』のオーラからも明らかだ。

 始まりは2年前。綿貫がティアフォーと初対戦した時、ベンチでティアフォーを温かく見守るフェレイラの姿に、直感するものがあったという。その時から「チャンスがあれば彼に師事したい」と望み、今大会でようやく叶った。
 
 そのタイミングでティアフォーと対戦できたのも、運命的。2年ぶりの再戦でキャリア最大の勝利の一つを得られたのも、もちろん新コーチの助言が大きい。特にティアフォーのサービスに関しては、状況に応じた傾向を子細に教えてもらえたという。綿貫の、コースを読み切ったかのような自信に満ちたリターンは、実際に読み切っていたのだ。

 ティアフォー戦のコートに向かう直前、戦略等の確認をしたその最後に、コーチは「これが一番大切なこと」として、綿貫にこう告げたという。

「観客を味方につけることが、今日の試合の一つのテーマ。そのためには、君自身が楽しんでプレーするんだ」

 コーチの助言を忠実に実践した綿貫は、「ウェインさんと(トレーナーの)長田(光生)さんと一緒に、本当に素敵な時間が過ごせている」と目を輝かせる。

「その時間を、少しでも長く継続させたい」

 それが、何にも勝る、今の彼のモチベーションだ。

現地取材・文●内田暁

【動画】絶好調の綿貫がティアフォーを破った「BNPパリバ・オープン」3回戦ハイライト

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