専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外テニス

「彼らが強いうちに勝ちたい」全豪準優勝のティームは、トップ3の立ちはだかる厚い壁に風穴を開けられるか?

内田暁

2020.02.03

3度目のグランドスラム決勝でも痛感させられた“ビッグ3”の分厚い壁。だがこれを越えなければティーム自身の成長もない。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

3度目のグランドスラム決勝でも痛感させられた“ビッグ3”の分厚い壁。だがこれを越えなければティーム自身の成長もない。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

“ビッグ3”の1人を破っても、その先に待つもう1人に勝たなくてはならない点こそが、若い世代に課された最難解なタスクである。それでも、3度目のグランドスラム決勝に挑むティームは、篤実な語り口調に、矜持の色を込めて言った。

「この数年間、僕の最大の課題の1つが、強い選手に勝った次の試合で負けてしまうことだった。だが経験を積み、このような状況に幾度も面しながら僕は成長してきた」

 今の僕は、初めてローランギャロスの決勝に勝ち上がった時の僕ではない――。
 その自信と誇りを胸に、彼は決勝の舞台へと歩みを進めた。

 時代が動く――。 

 試合開始から3時間近く経った頃、その気配に、ロッド・レーバー・アリーナはどこか落ち着きを失っていた。第1セットはジョコビッチが手堅く取るも、唸り声と共に左右から放たれるティームの強打がジョコビッチを凌駕し、2セットを奪い返す。さらには第4セットでも、第3ゲームでティームがブレークポイントを手にしていたのだ。両者が後に「あのポイント」と振り返る、決勝戦最大の分水嶺。そしてこの危機を、ジョコビッチはこの試合初めてとも言えるサーブ&ボレーで切り抜けた。

「サーブ&ボレーは、僕が得意なプレーとは言えない。滅多にやることもない。だからこそ、あのような状況では効果的な戦術だと思ったんだ」

 この判断と実行力を、経験の一言で済ませてしまうのは、あまりに短絡かもしれない。ただそれこそが、ティームの言う「勝敗を決する、非常に小さな点」なのだろう。このゲームをブレークできず、さらに5ゲーム後に1本のボレーを決めきれなかったのを境に、勝機はティームの手元をスルスルと離れていく。

 試合開始から、ちょうど4時間後――。「一番得意」と自負するフォアのショットがラインを割り、ティームの挑戦に終止符が打たれる。この試合が、グランドスラム3度目の決勝戦にして、彼が初めて喫したフルセットの敗戦だった。
 
 テニスの残酷性の1つは、決勝の直後に表彰式が行なわれ、失意の敗者もスピーチをしなくてはいけない点にあるかもしれない。

 それでも準優勝の証を手にしたティームは、勝者を称える言葉の後に、こう続けた。

「あなたたち3人が、テニスを新たなレベルに引き上げた。その時代に自分が戦えていることを、誇りと光栄に思っています」
 
 彼は今の時代に生きることを、不運ではなく幸運だと捉えていた。なぜなら「彼らの存在が、僕を遥かに高いレベルに導いてくれた」から。

 そしてだからこそ彼は、グランドスラム初優勝を、可能な限り早く手にしたいのだと言う。

「彼らが強いうちに勝ちたい。そうすればそのタイトルは、より一層の価値を持つことになるだろうから」……と。

文●内田暁

【PHOTO】全豪OPで躍動するフェデラー、ジョコビッチ、ハレプらトップ選手たちの美しいフォーム集!
 

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号