２年前に予選を勝ち上がった望月（同146位）は、再び芝での圧倒的な適性を示している。ロンドンに入ってくる前にも、イルクリーのATPチャレンジャーでベスト４、直近のノッティンガムでは準優勝。猫のように軽やかなフットワークと、相手のパワーを利した柔らかなカウンターが、ローハンプトンの芝でも面白いように相手を翻弄している。

　ウインブルドンジュニア優勝者でもある望月は、芝に絶対的な自信があるかに見えた。ただ本人は、「去年は全然勝てなかったし、今年も正直、そんなに勝てると思って入ってきた訳ではなかった」と明かす。ただ試合のみならず日々練習する中で、「自分の成長が実感できている。それが一番うれしい」と思いを噛みしめた。

　今大会には、ジュニア時代にIMGアカデミー専属コーチとして見てもらっていた、山中夏生氏に帯同してもらっている。昨年末からお願いし、要所要所で来てもらう新体制を整えた。

　共に過ごす日々に懐かしさを覚えるが、同時に、立場や関係性の変化に新鮮な気付きや刺激もあるという。その取り組みの中で今、望月は「自分で勝負できていると感じる」と言った。

「山中コーチは、自分らしさを見い出してくれる。変な言い方かもしれないですけど、僕の個性や“人と違うこと”を求めてくれる。僕は身長もないですし、パワーでは太刀打ちできない。じゃあどこで勝負するかというときに、違う視点を示してくれたり、自分を正してくれる」

　ジュニア時代に頂点に立ったその原点に立ち返り、同時に今ある武器で新たな戦いを模索する。その成果を実感しつつ、予選決勝では同期の実力者、ドミニク・ストリッカー（スイス／同244位）に挑む。
  　前哨戦の芝ではやや苦しい戦いが続いていた綿貫（同179位）は、ここに来て絶好調だ。

　今年は３月のインディアンウェルズで、世界17位のフランシス・ティアフォー（アメリカ／現12位）らを破り予選から本戦３回戦へ大躍進。ただその後は、従来通りリスクを取って攻めるか、じっくり組み立てるべきかの適正バランス模索に苦しんだ。

　その迷いを、今大会では「攻める」方向に振り切る。

　予選２回戦では、直近の対戦で敗れたコルトン・スミス（アメリカ／同135位）に7-6(3)、6-3で快勝する。

「序盤は、あまりサーブ＆ボレーが効かなかった。相手はストロークがうまいことがわかっていたので、ラリー戦でしっかり攻めようと思った」と、柔軟にプラン変更する余裕も示唆。勢いを止めることなく、予選決勝へと駆け込む。

現地取材・文●内田暁

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