専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外テニス

知将フィセッテと築いた“芝への対応力”。シフィオンテク、ウインブルドン初優勝の舞台裏<SMASH>

内田暁

2025.07.13

フットワークやリターンの変化に難色を示していたシフィオンテク(右)を、フィセッテ氏(左)が粘り強く説得した(※写真は昨年11月のWTAファイナルズ)。(C)Getty Images

フットワークやリターンの変化に難色を示していたシフィオンテク(右)を、フィセッテ氏(左)が粘り強く説得した(※写真は昨年11月のWTAファイナルズ)。(C)Getty Images

 グラスを持つ手を広げ、笑顔に微かな苦味を交えて、コーチが続ける。

「彼女を説得するのは、簡単ではなかった! コートで試しても、最初はうまくいかず、変えることを嫌がっていました。彼女は、『お手本になる動画を見せて。ジョコビッチやアルカラスではなく、実現可能な映像を見せて』と言うんです。

 でも私は、こう言いました。『君はすでに、フットワークにおいては“ゲームチェンジャー”だ。トップ中のトップにいる。そこからまた次のレベルに進もうというのだから、ジョコビッチ、アルカラス、シナーたちを参考にすべきだ』と。そこでようやく、彼女も納得してくれたんです」

 そう明かすフィセッテ氏は、スマホを手にし、いたずらっぽく笑って言った。

「実は今さっき、ロッカールームの彼女から、『あなたのアイディア、意外と悪くなかったかも』ってメッセージが来たんだ」…‥と。

 そのシフィオンテクに、果たしてフットワークがどのように上達したのか聞いてみた。すると新たな芝の女王は、「スライディング」だと即答する。

「かつての私は、芝ではスライディングができなかった。やっている選手はいたけれど、私は自分ができるとは信じられなかった」

 それこそが、コーチが辛抱強くシフィオンテクを説得した要素だった。
 
 もう一つ、今大会で彼女が大きく上達したのが「リターン」だと、フィセッテ氏が言う。実はその改善は、全仏オープンの最中に、人知れず始まっていたのだとも……。

「全仏オープンの4回戦、エレーナ・ルバキナ(カザフスタン/同11位)戦で第1セットを落とし、第2セットもブレークダウンした時です。ようやく彼女は、私の『リターンの時にもっと下がる』との助言を聞き入れてくれました。それまでも同じことを言い続けてきたのですが、彼女はなかなか納得しなかった。

 あのルバキナ戦の途中に初めて変えて、それ以降、基本的に同じようなポジションでリターンしています。特に芝では、あそこまで前に入ってリターンする必要はない。少し後ろでリターンした方が、時間的な余裕ができる。今日の試合でも、それがしっかりできていました」

 フットワークのドラスティックな改善に、フォアハンドの調整、そしてリターンの修正。わずか1カ月ほどの短期間に、それだけの変化と適応をシフィオンテクは経てきたのだ。

 初のウインブルドンでの戴冠は、確かに「夢に見た」ものではなかった。それはあくまで現実的な目標として定め、重ねた努力の果実なのだから。

現地取材・文●内田暁

【動画】シフィオンテクVSアニシモワの「ウインブルドン」決勝ハイライト

【画像】優勝のシフィオンテクはじめ、ウインブルドン 2025 を戦う女子トップ選手たちの厳選フォト

【関連記事】ウインブルドン決勝で史上初の6-0、6-0!シフィオンテクがアニシモワに完全勝利で念願の初制覇<SMASH>
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号

  • soccer_digest

    7月10日(木)発売!

    定価:800円 (税込)
  • world_soccer_digest

    7月17日(木)発売

    定価:890円 (税込)
  • smash

    7/18(金)発売!

    定価:800円 (税込)
  • dunkshot

    6月27日(金)発売!

    定価:1100円 (税込)
  • slugger

    5月23日(金)発売!

    定価:1100円 (税込)