いつもは感情の表出が控え目な彼女が、その場に背中から倒れ込み、両手で顔を覆うと、小刻みに肩を震わせていた。
23歳のアマンダ・アニシモワ(アメリカ/世界ランキング18位)が、WTA1000の「カタール・トタルエナジーズ・オープン2025」(カタール・ドーハ)で優勝。それは、10代半ばからテニス界の期待を集め、一時はその総量がキャパシティから溢れ出てしまったかつての天才少女が、23歳にして手にした“成熟の証し”でもあった。
10代前半からアメリカ国内で突出した存在だったアニシモワは、14歳の若さで全米オープン予選に主催者推薦(ワイルドカード)で出場。当時からフィジカルを含めた総合力が高く、17歳の時には全仏オープンベスト4に進出へと躍進した。
ただ2022年に入った頃から、彼女の“モチベーションの低下”は、徐々に表層化し始める。名コーチの誉れ高いダレン・ケーヒル氏が、アニシモワ陣営に加わったその数週間後に、白紙に戻したのが一つの契機。ケーヒル氏は、大会に備えるためにアニシモワと合流したものの、「彼女を指導するのは、困難な状態だった」と明かした。コロナ禍による種々の規制も、事態を複雑化させたという。
果たしてアニシモワは、同年8月の全米、さらに翌23年1月の全豪でも初戦で敗退。そして同年5月の全仏を前に、彼女は復帰の期日は設けず「休養を取る」ことを表明した。
「もはやツアーにいることが耐えられなくなった。今私が最優先すべきは、自身の心を守ることであり、休養を取ること」
自らのソーシャルメディアに、彼女はそう綴った。 ツアーを離れていたその間、彼女が行なったのは、「普通の生活を送ること」だったという。復帰を果たした24年1月にWTA公式サイトに語ったところによると、旅行に行き、友人と誕生日を祝い、大学で講義も受講したという。さらには以前からの趣味である絵画にも、一層力を入れた。絵を販売し、その収益金を寄付するチャリティ基金を立ち上げたのも、この当時だ。
「テニス選手の混沌とした生活から離れて休みを取ったのは、本当に良かった。2週間以上の休養を取ったのは人生で初めての経験。エネルギーと、何より幸福感を取り戻すことができた」
そうも彼女は語っている。
実際に復帰後のアニシモワは、再びランキングを駆け上がるプロセスを楽しむかのように、勝利を重ねていった。とりわけ完全復活を印象付けたのが、昨年8月の「ナショナルバンクオープン」(カナダ・トロント/WTA1000)だ。準々決勝で当時世界3位のアリーナ・サバレンカ(ベラルーシ/現1位)を、準決勝では15位のエマ・ナバーロ(アメリカ/同9位)を破り決勝戦へと躍り出る。この大会後、1月時点では442位だったランキングは、たちまち50位へとジャンプアップした。
23歳のアマンダ・アニシモワ(アメリカ/世界ランキング18位)が、WTA1000の「カタール・トタルエナジーズ・オープン2025」(カタール・ドーハ)で優勝。それは、10代半ばからテニス界の期待を集め、一時はその総量がキャパシティから溢れ出てしまったかつての天才少女が、23歳にして手にした“成熟の証し”でもあった。
10代前半からアメリカ国内で突出した存在だったアニシモワは、14歳の若さで全米オープン予選に主催者推薦(ワイルドカード)で出場。当時からフィジカルを含めた総合力が高く、17歳の時には全仏オープンベスト4に進出へと躍進した。
ただ2022年に入った頃から、彼女の“モチベーションの低下”は、徐々に表層化し始める。名コーチの誉れ高いダレン・ケーヒル氏が、アニシモワ陣営に加わったその数週間後に、白紙に戻したのが一つの契機。ケーヒル氏は、大会に備えるためにアニシモワと合流したものの、「彼女を指導するのは、困難な状態だった」と明かした。コロナ禍による種々の規制も、事態を複雑化させたという。
果たしてアニシモワは、同年8月の全米、さらに翌23年1月の全豪でも初戦で敗退。そして同年5月の全仏を前に、彼女は復帰の期日は設けず「休養を取る」ことを表明した。
「もはやツアーにいることが耐えられなくなった。今私が最優先すべきは、自身の心を守ることであり、休養を取ること」
自らのソーシャルメディアに、彼女はそう綴った。 ツアーを離れていたその間、彼女が行なったのは、「普通の生活を送ること」だったという。復帰を果たした24年1月にWTA公式サイトに語ったところによると、旅行に行き、友人と誕生日を祝い、大学で講義も受講したという。さらには以前からの趣味である絵画にも、一層力を入れた。絵を販売し、その収益金を寄付するチャリティ基金を立ち上げたのも、この当時だ。
「テニス選手の混沌とした生活から離れて休みを取ったのは、本当に良かった。2週間以上の休養を取ったのは人生で初めての経験。エネルギーと、何より幸福感を取り戻すことができた」
そうも彼女は語っている。
実際に復帰後のアニシモワは、再びランキングを駆け上がるプロセスを楽しむかのように、勝利を重ねていった。とりわけ完全復活を印象付けたのが、昨年8月の「ナショナルバンクオープン」(カナダ・トロント/WTA1000)だ。準々決勝で当時世界3位のアリーナ・サバレンカ(ベラルーシ/現1位)を、準決勝では15位のエマ・ナバーロ(アメリカ/同9位)を破り決勝戦へと躍り出る。この大会後、1月時点では442位だったランキングは、たちまち50位へとジャンプアップした。