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海外テニス

「自分のピークは20代後半」有言実行となった全豪オープン。ダニエル太郎は独自のテニス人生を歩む「自分は芸術家だ、と信じたい」<SMASH>

内田暁

2022.01.23

ダニエル太郎は今大会だけでなく今後の試合も考えてプレーしていた。(C)Getty Images

ダニエル太郎は今大会だけでなく今後の試合も考えてプレーしていた。(C)Getty Images

 結果的にはこのゲームが、試合のターニングポイントになっただろう。第3セットを奪ったシナーは、一度アクセルを踏み込んだ足を浮かすことなく、一気に勝利まで走り抜けた。

「あのゲームは、デュースからまたマックス・リスクで攻めたら、ミスがでちゃった。でも、あれはあれで良かった」。熱戦の結末から、約1時間後。試合の分岐点となったゲームを、ダニエルは淡々と振り返った。

「次に上位の選手とやった時に、相手が『こういう場面で太郎は絶対に粘ってくるんだ』と思っている中で僕がダブルファースト(セカンドでも速いサービスを打つこと)をすれば、取れるかもしれない。あの場面でポイントを取るためだけに、取ったリスクではない。今後にも続くリスク」

 それが、ダブルフォールトに込められた思い。観ている者も痺れるあの状況下で、彼は目先のポイントよりも将来を見据え、勝負を仕掛ける経験値を選んだというのだ。そのようなこちらの驚きを、察しただろうか。

「あれを取れていたら、展開が違っていたかもしれないので残念ですが……へっへっ、しかたないです」。そう言い彼は、照れたように笑った。
 
 テニスの上達を人生観と重ねる彼の視座は、今も昔と変わっていない。

「自分は芸術家だ、と信じたいなと思っていて。ハードワークというより、自分がやりたいからやるというテニスキャリアと人生にしていきたい。そういう風にとらえていけば、勝っても負けても……もちろん勝ちたいですが、そういう風に思っています」

 芸術家とは、自己表現こそを最大のモチベーションとする生き方のメタファー(比喩)なのだろう。キャリア最大の大舞台をも自己表現の一部ととらえ、この先もダニエルは確かな足取りで、独自のテニス道を歩んでいく。
 
現地取材・文●内田暁

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