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海外テニス

狭いコートに2メートル超えの対戦相手、第4セットではメディカルタイムアウト… 絶対絶命的な状況から錦織圭が見せた底力【全仏テニス】<SMASH>

内田暁

2024.05.28

試合後の会見では錦織らしいユーモアを交えながら質疑応答に臨んだ。(C)Getty Images

試合後の会見では錦織らしいユーモアを交えながら質疑応答に臨んだ。(C)Getty Images

 試合直後――。ファンがスマホを手にコートを後にする勝者を追うなか、錦織はトレーナーに先導され、選手ラウンジへの道を急ぐ。錦織が会見室に現れたのは、試合終了から、約2時間後。時計の針は、0時を超えていた。

 死闘の余韻と深夜特有のテンションが会見室を満たすなか、当の錦織だけは一人、何事もなかったかのような平時の佇まいで、そこにいた。

 疲労の色は当然ながらありながらも、何も飾らず取り繕わず、時にユーモアも交えて質問に応じるその姿もまた、既視感に満ちた光景だった。2014年全米オープンでミロシュ・ラオニッチ(カナダ/同196位)に勝った後の深夜の会見も、ケガからの復帰間もない18年の全仏オープン2回戦で、ブノア・ペール(フランス/同155位)にフルセットで勝った時も……。
 
 会見での終盤。4セット目終了時にMTOを取った心境を問われると、錦織は少し目線を落として、朴訥な口調で言った。

「身体が痛いのを取るか、尿漏れを取るか悩んだんですけど、ワンチャン、60秒でトイレ行けばいいかなと思って。でもダッシュで行ったんですけど全然止まらなくて、それであんなギリギリになっちゃったんですけど……」

 この良い意味での脱力感も含め、錦織圭が、帰ってきた。

現地取材・文●内田暁

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