テニス界の歴史がまた一つ塗り替えられる。男子テニスツアーを統括するATP（男子プロテニス協会）は23日、サウジアラビア公共投資基金（以下PIF）傘下のスポーツ事業会社『Surj Sports Investment』との提携を発表し、四大大会に次ぐグレードを誇る「マスターズ1000」のトーナメントを同国で新設することを正式に決定した。

　これによりサウジアラビアはインディアンウェルズ（米国）、マイアミ（米国）、モンテカルロ（モナコ）、マドリード（スペイン）、ローマ（イタリア）、トロント／モントリオール（カナダ）、シンシナティ（米国）、上海（中国）、パリ（フランス）に続く10番目のマスターズ開催地となり、第１回大会は最速で2028年に開催される予定だ。

　周知の通りサウジアラビアはエキジビションマッチ「シックス・キングス・スラム」や20歳以下の男子シーズン最終戦「Next Gen ATPファイナルズ」、さらには女子シーズン最終戦「WTAファイナルズ」の開催などを通じて、テニスとの関わりを広げてきた。

　またテニスの他、サッカー、ゴルフ、モータースポーツ、格闘技、eスポーツなど、国内外の幅広い分野でスポーツを支援しているPIFは現在ATP世界ランキングの公式スポンサーも務めている。

　ちなみに「マスターズ1000」カテゴリーにおける大会新設は、1990年のATPツアー発足以来35年の歴史で初めて。ATPは新大会を通じて、サウジアラビアテニス連盟と共に全国規模の育成プログラムを展開することを意図している。これは男女双方でテニスの発展を支援するというPIFの広範な目標の一環であり、包摂性・アクセス向上・人材育成を推進するとともに、同国における次世代のアスリートやチャンピオンの育成、あらゆるレベルでのスポーツ発展を目指していくとのことだ。
 
　発表にあたり、ATPのアンドレア・ガウデンツィ会長は次のように喜びを語っている。

「大会新設は私たちにとって誇るべき瞬間であり、長年にわたる努力の成果です。サウジアラビアはプロレベルにとどまらず、あらゆるレベルでテニスの発展に真摯に取り組んできました。特にPIFのスポーツへの野心は明確であり、ファンや選手たちも今後の展開に驚くことでしょう。PIFおよびSURJのパートナーシップに感謝するとともに、このビジョンを共有できることをうれしく思います」

　また『Surj Sports Investment』のダニー・タウンゼントCEO（最高経営責任者）も今回のマスターズ新設を「転機」と表現した上で、こうコメントした。

「サウジアラビアでマスターズ1000大会を開催することは、スポーツ界における我々の歩みの中で決定的な瞬間です。これは単なるイベントではなく、サウジアラビアが世界的なスポーツの拠点であることを示す“野心の表明”でもあります。ATPとの協力の下、選手とファンの双方にとって特別な体験を提供し、あらゆるレベルでスポーツを発展させるという我々の使命を推進していきます」

　最高峰の大会が新たな地域に広がることは、テニスの魅力を世界規模で発信するための好機となるだろう。ただ、新大会の追加によりATPツアーの日程はさらにタイトになり、選手たちの体力面やスケジュール調整への影響は看過できないだろう。

文●中村光佑

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