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海外テニス

テニス界進出を図るサウジアラビアで「マスターズ1000」開催案が浮上。懸念と推進の声が渦巻く<SMASH>

中村光佑

2023.10.26

ATP500、WTA500の男女共催大会として行なわれた今年の「ムバダラ・シティDCオープン」。サウジアラビアのテニス界進出は日ごとに顕著になっている。(C)Getty Images

ATP500、WTA500の男女共催大会として行なわれた今年の「ムバダラ・シティDCオープン」。サウジアラビアのテニス界進出は日ごとに顕著になっている。(C)Getty Images

 近年様々なスポーツへの財政投資に積極的な姿勢を見せているサウジアラビアで、テニスにおいても2025年シーズンから四大大会に次ぐマスターズ1000大会を開催するプランが浮上していることが、スペインのテニス専門メディア『Punto de Break』などの報道で明らかになった。

 周知の通りサウジアラビアとテニスの結びつきは日を追うごとに強くなっている。今年6月にはアメリカ・マンハッタンに本社を置く世界的な金融機関のシティグループが、サウジアラビアのファンドであるムバダラ・インベストメント・カンパニーと合併し、ツアー大会「シティ・オープン」の名称が、今年から「ムバダラ・シティDCオープン」に変更された。

 また11月に開催される21歳以下の男子テニスシーズン最終戦「ATPネクストジェンファイナルズ」の開催地がサウジアラビアに決定し、27年まで同国での開催権を手にしたとも報じられた。

 だがテニス界はサウジアラビアの介入を快く思っているわけではない。それには同国がスポーツを利用して過去の人権問題や女性差別といった不都合な事実を洗い流す“スポーツウォッシング”が問題視されていることや、潤沢なオイルマネーを活用したプロゴルフへの投資がツアーの分裂を引き起こしたという黒歴史があることが関係している。ただそれでもマスターズ開催は現実味を帯びてきているようだ。 

『Punto de Break』はサウジアラビア・マスターズの詳細について「25年シーズンから毎年1月に行なわれる見込みで、男女共催となる可能性もある」と伝えており、仮にそれが実現した場合は大幅なツアースケジュールの改革が必要になるとの考えを示している。1月には年内最初の四大大会「全豪オープン」が開催されるため、新たなマスターズをどこに組み込むのかが問題となるわけだ。カレンダーには大きな変化が生じることが予想される。
 
 一連の報道を受け、イタリアテニス連盟のアンジェロ・ビナーギ会長は伊メディア『Il Corriere della Sera』の取材で、ATP(男子プロテニス協会)の会長である同郷のアンドレア・ガウデンツィ氏とサウジアラビアでのマスターズ開催について話し合いを進める意向を表明。近年イタリアテニス界が驚異的な発展を遂げている現状にも触れ、こう述べた。

「(開催に向けて)私は、テニスは他のスポーツとは違うのだと、ガウデンツィ氏を説得しようとしている。サウジアラビアは魅力的な市場となり得るが、イタリアテニス界のようにうまく機能するには保護が必要だ。サウジアラビアがゴルフ界に引き起こしたことがテニス界で繰り返される恐れはない。私はサウジアラビア・マスターズがWTA(女子テニス協会)との共催という形になり、彼ら(テニス団体)の競技に対する望みを満たすことを願っている。サウジアラビアで新たなシーズンがスタートする...もちろんこれはテニス界の革命となるだろう」

 とはいえすでに過密日程を強いられている中で大規模大会が増えることは、賛否両論を巻き起こしそうだ。今後の動向に注目していきたい。

文●中村光佑


【動画】「ムバダラ・シティDCオープン」として開催された今年のワシントン大会男子決勝ハイライト

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