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海外テニス

「試合でつらい時はウクライナの人々を思いながらプレーをする」出産を経て存在感を放つスビトリーナが複雑な心境明かす<SMASH>

中村光佑

2023.07.28

母国ウクライナの惨状に心を痛めながらも、出産後はツアーへ復帰して好成績を残しているスビトリーナが現在の複雑な思いを語った。(C)Getty Images

母国ウクライナの惨状に心を痛めながらも、出産後はツアーへ復帰して好成績を残しているスビトリーナが現在の複雑な思いを語った。(C)Getty Images

 産休明けから素晴らしい活躍を見せている女子テニス元世界ランク3位のエリナ・スビトリーナ(ウクライナ/現27位)が、アメリカの女性向けファッション雑誌『Harpeers Bazar』のインタビューに登場。ロシアとベラルーシによる卑劣な侵略戦争で甚大な被害を受けている母国ウクライナの人々への想いが自分を支えてくれていると語った。

 ロシアによる母国への侵攻に抗議しながらも選手活動を続けてきたスビトリーナは、昨年3月に「この数か月間は精神的にも肉体的にも非常につらく、ベストな状態で大会へ臨めなかった」ことを理由にツアーからの離脱を表明。10月には第1子を出産し、現在は夫で元世界6位のガエル・モンフィス(フランス/現322位)とともに育児にも奔走する日々を送っている。

 出産を経て懸命なトレーニングに励んできたスビトリーナは、今年4月のチャールストン・オープン(WTA500)で約1年ぶりに実戦復帰。同月にスイスのITF下部大会で復帰後初勝利を挙げると、少しずつ調子を上げ、5月のストラスブール国際(WTA250)では終始ハイクオリティなパフォーマンスを見せて優勝。その勢いそのままに6月の全仏オープンでベスト8、今月初旬のウインブルドンではベスト4へ進出するなど、順調に完全復活ロードを歩んでいる。

 公私ともに充実した日々を送る中でも悲惨な状況に陥っている自国民への心配は尽きないとスビトリーナは語る。「ウクライナで起きていることを考えないようにするのは本当に難しい」と苦しい胸の内を吐露した彼女は、「試合でつらいことがあった時はウクライナの人々がどのような思いを抱いているのかを想像しながらプレーしている。そうすることで私は幸運な人間であること、さらには健康で好きなことができていて、コートに立てていることを実感できる」と語った。
 
 またスビトリーナは「戦争が始まって以来、私が話をしたウクライナの女性の多くは、人生観が取り返しのつかないほど変わってしまったと言っている。その通り、私たちウクライナ人全員(の何もかも)が変わった」としつつも、「(収束の兆しが見えない)戦争から得られた教訓も多々ある」と明かす。これについては以下のように説明した。

「今はただ、毎日を楽しもうとしている。ウクライナ侵攻は私たちに、今この瞬間を大切にすること、何事も当たり前のことだと思わないこと、家族や友人をもっと大切にすることを教えてくれた。今、私たち(ウクライナ人)は皆、人生の一瞬一瞬を大切にしていると思う」

 母国を取り巻く複雑な世界情勢はスビトリーナのメンタルコントロールにも大きく影響しているのがわかる。そんな中でも大会で結果を残し続けている彼女は大いに評価されるべきだろう。今後も苦境に立たされている母国ウクライナの人々が少しでも前向きになれるようなプレーを見せ続けてほしい。

文●中村光佑

【画像】ウインブルドン2023で躍動したスビトリーナほか女子トップ選手の厳選写真
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