男子テニス世界ランク2位のノバク・ジョコビッチ(セルビア/37歳)が8月18日に自身の公式SNSを更新し、誤審防止を目的としたビデオ判定の導入を強く求めた。
事の発端は現地16日に行なわれた男子テニスツアー「シンシナティ・オープン」(8月12日~19日/アメリカ・シンシナティ/ハードコート/ATP1000)のシングルス3回戦でのことだった。
ジャック・ドレイパー(イギリス/同25位)とフェリックス・オジェ-アリアシム(カナダ/同19位)の対戦となったこの試合は、互いに1セットずつを取り合う接戦に。ファイナルセットではドレイパーが先にブレークを果たし、第10ゲームでサービング・フォー・ザ・マッチを迎えた。
マッチポイントを獲得するも、粘りを見せるオジェ-アリアシムに40―30とされたドレイパー。それでも次のポイントでは相手の強烈なリターンに対して低い体勢でのボレーで返球。そのボールがネットをかすめてオジェ-アリアシム側のコートに落ちると主審は試合終了を告げた。
ところがこの判定に信じられないと言わんばかりの表情を見せたオジェ-アリアシムは、「ボレーは1度コートでバウンドさせてから打たれて僕のコートに落ちた。見てなかったのか?」と主審に抗議。一方のドレイパーは「僕はフェリックスの方を見ていたから、どうなったのかがわからない。ポイントをやり直せるならやり直そうよ」と訴えた。
程なくしてスーパーバイザー(監督者)を挟んだ協議まで行なわれたが、結局主審はオジェ-アリアシムの抗議を受けてからも頑なに当初の判定を覆さず。最終的にはオジェ-アリアシムが折れる形で対戦相手と握手を交わし、ドレイパーの勝利が決まった。
ちなみに『Tennis TV』が公開したリプレー映像を見てみると、オジェ-アリアシムは自身のパッシングショットでドレイパーのボレーミスを誘えたことを確信していたのか、ボールが自コートにネットインした瞬間は見ていなかった様子だ。
ただドレイパーのボレーをアップした映像では確かにオジェ-アリアシムの主張通り、ボレーは1度ドレイパーのラケットフレームに当たりバウンドし、そのボールがボレーされているようにも見える。しかしこれらのリプレー映像は視聴者用のため、ドレイパーとオジェ-アリアシムの2人に見せられることはなかったようだ。
問題のシーンにいち早く反応したのは、今大会2回戦でドレイパーに敗れたステファノス・チチパス(ギリシャ/11位)だった。チチパスはSNSで上記のドレイパーのボレー映像を添え、「このようなショットは見たことがないと思う」と驚きをもって投稿。すると今度はこのチチパスの投稿をジョコビッチが引用し、次のように自身の考えを強く主張した。
「コート上でのこういうシーンがビデオで再現されないのは恥ずべきことだ。さらに馬鹿げているのは、コート外でチェックしたビデオ判定に基づいて主審が当初の判定を変更できるというルールがないことだ!テレビを見ている人はリプレーで何が起こったかがわかるのに、コート上の選手にはそれが知らされない。
僕たちにはライン判定を補完するホークアイがある。我々は技術的に進歩した21世紀に生きている!各ツアー、どうかこのような馬鹿げたことが二度と起こらないようにしてほしい!」
ジョコビッチの言うことはもっともである。審判の権限が強すぎる現状が一連の騒動を招いたと言えるのではないだろうか。いち早くテニス界には再発防止策を検討してほしい。
文●中村光佑
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ジャック・ドレイパー(イギリス/同25位)とフェリックス・オジェ-アリアシム(カナダ/同19位)の対戦となったこの試合は、互いに1セットずつを取り合う接戦に。ファイナルセットではドレイパーが先にブレークを果たし、第10ゲームでサービング・フォー・ザ・マッチを迎えた。
マッチポイントを獲得するも、粘りを見せるオジェ-アリアシムに40―30とされたドレイパー。それでも次のポイントでは相手の強烈なリターンに対して低い体勢でのボレーで返球。そのボールがネットをかすめてオジェ-アリアシム側のコートに落ちると主審は試合終了を告げた。
ところがこの判定に信じられないと言わんばかりの表情を見せたオジェ-アリアシムは、「ボレーは1度コートでバウンドさせてから打たれて僕のコートに落ちた。見てなかったのか?」と主審に抗議。一方のドレイパーは「僕はフェリックスの方を見ていたから、どうなったのかがわからない。ポイントをやり直せるならやり直そうよ」と訴えた。
程なくしてスーパーバイザー(監督者)を挟んだ協議まで行なわれたが、結局主審はオジェ-アリアシムの抗議を受けてからも頑なに当初の判定を覆さず。最終的にはオジェ-アリアシムが折れる形で対戦相手と握手を交わし、ドレイパーの勝利が決まった。
ちなみに『Tennis TV』が公開したリプレー映像を見てみると、オジェ-アリアシムは自身のパッシングショットでドレイパーのボレーミスを誘えたことを確信していたのか、ボールが自コートにネットインした瞬間は見ていなかった様子だ。
ただドレイパーのボレーをアップした映像では確かにオジェ-アリアシムの主張通り、ボレーは1度ドレイパーのラケットフレームに当たりバウンドし、そのボールがボレーされているようにも見える。しかしこれらのリプレー映像は視聴者用のため、ドレイパーとオジェ-アリアシムの2人に見せられることはなかったようだ。
問題のシーンにいち早く反応したのは、今大会2回戦でドレイパーに敗れたステファノス・チチパス(ギリシャ/11位)だった。チチパスはSNSで上記のドレイパーのボレー映像を添え、「このようなショットは見たことがないと思う」と驚きをもって投稿。すると今度はこのチチパスの投稿をジョコビッチが引用し、次のように自身の考えを強く主張した。
「コート上でのこういうシーンがビデオで再現されないのは恥ずべきことだ。さらに馬鹿げているのは、コート外でチェックしたビデオ判定に基づいて主審が当初の判定を変更できるというルールがないことだ!テレビを見ている人はリプレーで何が起こったかがわかるのに、コート上の選手にはそれが知らされない。
僕たちにはライン判定を補完するホークアイがある。我々は技術的に進歩した21世紀に生きている!各ツアー、どうかこのような馬鹿げたことが二度と起こらないようにしてほしい!」
ジョコビッチの言うことはもっともである。審判の権限が強すぎる現状が一連の騒動を招いたと言えるのではないだろうか。いち早くテニス界には再発防止策を検討してほしい。
文●中村光佑
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