ゴルフ

畑岡奈紗は秘かに爪を研ぐ。米ツアー賞金女王、東京五輪の金メダルを狙って【黄金世代の歩み】

山西英希

2020.05.30

国内女子ツアーで5勝、米女子ツアーで3勝を挙げる畑岡奈紗は、「東京五輪が中止にならなかったことはよかったですね」と語った
。(C)Getty Images

 渋野日向子のように海外メジャーを制してはいないものの、黄金世代の中で圧倒的な実績を残しているのが畑岡奈紗だ。国内女子ツアーで5勝、米女子ツアーで3勝という数字は立派のひと言に尽きる。しかも、国内5勝のうち3勝が日本女子オープン、1勝が日本女子プロの公式戦なのだ。世界ランキングも4位をキープしており、いつ海外メジャーに勝ってもおかしくない選手だといえる。

 その畑岡の武器といえば、正確なアイアンショットと勝負強いパッティングにある。アイアンショットに関してはジュニア時代からハイレベルで、17歳で優勝した日本女子オープンでも積極的にピンを狙い、スコアを伸ばしていった。その際に驚いたのがインパクトの音だ。"ドン!"という女子の試合では聞いたこともない力強い音を発していた。ヘッドスピードが速く、クラブフェースの真芯でボールをとらえているからこそ出せる音だが、ショットの精度を含めて、周囲に末恐ろしさを感じさせていた。実際、難しいコースセッティングで結果を残しているのも、アイアンショットに絶対の自信を持っているからだろう。聞けば、アイアンショットでは低、中、高、ストレート、フェード、ドローを打ち分けることができ、組み合わせ次第で9種類の球筋を操るという。それをピン位置や天候によって最適な弾道を選択するのだから、ピンに寄る確率が高いのは当然かもしれない。
 
 しかし、畑岡がここまで成長できたのは技術面もさることながら、その性格にあるのではないか。とにかく素直なのだ。もちろん、それはゴルフに対しても変わらない。だからこそ、ナショナルチームに入ってからもヘッドコーチであるガレス・ジョーンズ氏の教えを積極的に取り入れることができた。ジョーンズ氏は細かいデータを元に、選手各自の短所から長所までを割り出し、それを元にして練習メニューを与えていた。さらに食事面からトレーニングに関しても徹底した管理を行ったという。ある程度実績のある選手にしてみれば、自分を否定される部分もあっただろうが、ジョーンズ氏を信じることで結果を残した選手は数多い。仮に畑岡が自己流を貫いていたら、ここまで早く結果を残していなかったかもしれない。