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ゴルフ

コロナ禍で露見した女子ゴルフ界の「現実」。無観客での開幕戦はツアー発展の明暗を分ける試金石に

山西英希

2020.06.25

渋野も参戦するアース・モンダミンカップは、今後の女子ゴルフ界の発展を占う試金石になりそうだ。写真:Getty Images/JLPGA提供

渋野も参戦するアース・モンダミンカップは、今後の女子ゴルフ界の発展を占う試金石になりそうだ。写真:Getty Images/JLPGA提供

 6月25日からアース・モンダミンカップが千葉県のカメリアヒルズカントリークラブで開催される。新型コロナの影響により、3月第1週から実に16試合連続で大会中止が続いていた国内女子ツアーだが、ようやく今季第1戦の初日を迎えることになる。

「(新型コロナの影響があっても)準備を怠りなく続けた結果、たまたま緊急事態宣言が解除され、大会を開催できることとなりました」と、主催者であるアース製薬株式会社の大塚達也会長は語る。6月3日には開催を発表していたが、新型コロナの感染状況や政府の方針によっては、中止も十分あり得たと言う。それだけに日本女子プロゴルフ協会とともに、感染症専門委員のアドバイザーや保健所と密に連絡を取り合い、感染防止の手段を講じてきた。大会自体は無観客試合となったが、開催週に入っても選手や関係者のPCR検査、アルコール消毒などを徹底してきたことを考えれば、無事、開催週までたどり着いたことは大塚会長にとって感無量だろう。

 正直、選手を含めたゴルフ関係者の多くが疑心暗鬼になっていたのは確かだ。本当に開催するのだろうか。仮に開催しても感染予防対策は十分に行われるのだろうかなど、疑えばキリがなかった。それでも選手の誰もが開催を願っていたことは間違いない。プロ野球やJリーグと違い、プロゴルファーはトーナメントに出場して賞金を稼いでナンボだからだ。女子プロの場合、一般企業とスポンサー契約を結ぶ選手は多いが、契約金で生活できる選手はごく一部だ。しかも、トーナメントが開催されなければ露出が減るため、いつ契約を打ち切られてもおかしくない。生活の不安を抱えていた選手はけっして少なくないはずだ。
 
 また、海外ツアーに参戦した選手を除けば、昨年12月から約7か月間も実戦から遠ざかったことになる。いくらツアープロ同士でラウンド練習を行なったり、ミニツアーに出場したとしても、トーナメント仕様のコースセッティングでプレーしていなければ、さすがに試合勘も失われているだろう。少しでも早く自分の感覚を取り戻すためにも、このタイミングでの開催はプラスになる。渋野日向子は、「オフの間にアプローチ、特に転がしを徹底して行っていた」と語ったが、それを試す場がなければどこまで習得できたのか判断できない部分もある。実戦で自分の技術を確認したいのは、どの選手にも共通することだろう。だからこそ、上位に行く、行かないに関係なく、トーナメントへの出場自体に大きな意義がある。

 もちろん、今大会が開催されることで恩恵を受けるのは選手だけではない。帯同キャディやトレーナー、コーチ、用品メーカー、ゴルフメディア、大会運営会社、PR会社など数多い。感染防止のため、無観客試合で行われるものの、女子プロ人気を支えているゴルフファンにとっても朗報だろう。秋に大会を開催する予定の主催者にしてみれば、少なくとも「どこも開催していないから」という理由で大会中止を決定することはできなくなったわけだ。むしろ、コロナ禍でもこういう対応をすることで、開催可能だという先例になった分、前向きになるかもしれない。どこかが始めなければ何も始まらない状況だっただけに、アース・モンダミンカップの英断には大きな拍手が送られるべきだろう。
 

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