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フィギュア世界選手権出場のユ・シュランさんが、ジュニア時代中国での練習で虐待があったことを告発

THE DIGEST編集部

2020.07.26

コーチからの虐待の過去をインスタグラムで告発したユ・シュランさん(C)Getty Images

コーチからの虐待の過去をインスタグラムで告発したユ・シュランさん(C)Getty Images

 世界選手権に出場した経歴を持つ元女子フィギュアスケーターのユ・シュランさんが、中国で練習を行なっていたジュニア時代に、コーチから虐待を受けていたことを自身のインスタグラム上で告発した。英国紙『ガーディアン』電子版が、同紙によるインタビューと併せて報じている。

 中国出身の両親を持つユ・シュランさんは、父親がシンガポール市民権を持っていたこともあり、現役時代はシンガポール・スケート協会に籍を置ながら、中国を拠点にフィギュアスケートの練習に力を注いでいた。しかし、神経疾患を患ったことで、2018年に引退を余儀なくされた。

 9歳の頃、コーチからオリンピックに出場するためにどんな努力も惜しまないか?と聞かれたユ・シュランさんは、「はい」と答えた。だが、その後何が起こるのか当時は知るすべがなかったと言う。

「身体的な虐待が始まったのは11歳の時。コーチは、ブレードカバーで私を叩くようになったの。ほとんどの方は知らないと思いますが、カバーはプラスチック製で、エッジを覆うためのものです。それで叩かれると、ムチで打たれたような音とともに腫れと赤い跡が皮膚に残る。ほんの小さなミスでもコーチは毎回怒って、私に腕を出させて叩いた。何も言わずにいきなり足や腕を痛めつけることもあった。練習中、リンクにいた全員の前でされたわ。そして、練習後には他の人から見えない場所で声を上げて怒鳴りつけられ、より強く叩いた。ひどい時は、皮膚がむけるまで10回以上連続で叩かれた」と、自身のインスタグラムでその詳細を明かした。
 
 インタビューの中では、「14歳の頃、成長に伴う体重増加でジャンプに苦戦していた私は、コーチに怒鳴りつけられて足のすねをエッジのトップ部分で蹴られ、やり直しを命じられた。泣くことも足を引きずることも許されなかったわ」と、別のエピソードも告白。出血に加え傷が残ることも度々だったと言う。

 虐待が常に人前で行なわれていたことで、恥ずかしさから、友人、家族や協会、誰にも相談できなかったとその胸の内を打ち明けたユ・シュランさん。精神的にも追い詰められ、練習に出かけるのが苦痛で交通事故にあえばいいのにと願うこともあったと言う。虐待により人間性を奪われたと感じているそうだ。

 そして、19歳になった今、告白を決意できたのは、先日放映された米国女子体操界の虐待を描いたドキュメンタリーと、英国の元女子体操選手らによる告発に背中を押されたからだと話している。「体操やフィギュアスケートなど芸術要素の強い競技界で、有害なものが蔓延している。力関係が採点に影響するため、誰もが排除されることを恐れて言い出すことができない」と、特定競技の問題点を指摘した。

 2018年に現役を退いたユ・シュランさんが、最近、指導者として中国へ出向いた際にリンクで見たのは、ジュニア選手が叩かれ、氷の上を引きずられるかたわらで、別の選手はじん帯を痛めた膝で練習を強要される光景だったという。後に両選手ともが、手術を要する負傷だったことを知ったそうだ。世界のスポーツ界が変わりつつある中、同国に今現在も『虐待の文化』が根強く残っていることに衝撃を受けたと言う。

 ユ・シュランさんは、次世代のアスリートたちを保護支援することを決断。自分の経験について詳細を伝えるため、シンガポール・アイススケート協会と、同国文化庁に属するスポーツ関連部署(スポーツ・シンガポール)と連絡を取り合っているとのことだ。また、中国開催の2022年北京冬季オリンピックを前に、国際オリンピック協会がアスリートたちの勇気ある告発を重く受け止め、対応に動き出して欲しいと訴えている。

構成●THE DIGEST編集部

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