ゴルフ

“寄せる“のか“入れる“のか…45位タイに順位を下げた渋野日向子のパッティングに見えた迷い

山西英希

2020.10.03

前日の22位タイから45位タイに順位を下げた渋野は、「情けない」と自身のプレーを嘆いた。(C)Getty Images

 LPGAツアー『ショップライトLPGAクラシック』2日目、4バーディ、5ボギーの72で回った渋野日向子は通算2アンダーでフィニッシュ。前日の22位タイから45位タイに順位を下げた。

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「もう情けないのひと言だし、悔しいのひと言です」

 ホールアウト直後に対応したテレビ中継のインタビューで、渋野は開口一番そう答えた。自らのパッティングに対しての怒りだった。確かにこの日叩いた5つのボギーのうち4つが3パットによるもので、残りの1つも2メートルのパーパットを外したものだ。特に、後半の14番から16番では1・5メートル以内を外しての3連続3パット、さらに追い打ちをかけるように17番では2メートルのバーディパットを外しただけに、腹の中が煮えくり返っていたことは容易に想像できる。「距離感が合っていなかったし、ラインも読めていなかった」ことが3パットの要因だと語り、「ラインを読む練習をしてもどうなのか……」と悩み深い表情を見せていた。

 しかし、そこまで自分を追い込む必要はあるのだろうか。渋野といえば、昨年の『AIG全英女子オープン』でのウイニングパットで見せたように、思い切りのいいパッティングが大きな武器である。昨シーズン、国内女子ツアーでの平均パット数はパーオンホールで2位(1・7582)、1ラウンドあたりで5位(29・1144)と、トップクラスの数字を誇る。単調な練習でもひたすら繰り返すなど、パッティングに関しては他人には想像できないほどの練習量をこなしてきたことで、パットの技術はかなりのレベルにある。もちろん、国内での結果をそのまま海外でも出せるとは限らない。日本と海外とではグリーンの芝も違えば、スピードや傾斜も異なるからだ。ただ、この日のラウンドでは渋野が悲観するほどパッッティングが悪かったとは思えない。

 2番パー4では、3メートルのパーパットを沈めたし、10番パー4では4メートルのバーディパットを沈めた。13番パー4でも3メートルのパーパットを沈めている。確かに1メートル前後の距離を何回も外したことはもったいないし、決めておけばという気持ちにもなる。ただ、今回の開催コースであるシービュー・ドルチェホテル・ベイコースは6190ヤードと距離が短い。ショートアイアンでグリーンを狙うことが多いだけに、ピンポジションはかなり厳しくなる。この日も落下地点がほんの数センチ左右にずれただけで、難しいアプローチが残る場面がいくつかあった。当然、パッティングでもいくらピンの近くに乗せたとしても簡単なラインが残らないところを選んでいる。渋野が1メートルの距離でもラインを読み間違えたと語っていたが、セッティングする方にしてみれば、そうなることを計算してカップの位置を決めているのだろう。その証拠に、初日は首位のスコアが8アンダーだったが、2日目の首位は畑岡奈紗の11アンダーと、それほどトップのスコアが伸びなかった。
 
 その畑岡にしても、怒涛のバーディラッシュでスコアを伸ばしたわけではない。5バーディ、1ボギーだったが、バーディ数は渋野と1つしか変わらないのだ。ただ、6番から15番まで10ホール連続でパーを並べるなど、ボギーを叩かずに我慢し続け、チャンスがきたらきっちり決めるゴルフをしたに過ぎない。ロングパットでも確実に2パットで決める安定感が生んだスコアなのだ。だからといって、渋野が畑岡のゴルフを目指す必要はない。渋野は渋野のスタイルを貫けばいいだけだ。ただ、畑岡にはロングパットは入れるよりも確実に寄せようという意志が見ている側にも伝わってきたが、渋野には寄せにいくか、入れにいくかの迷いがあったように感じられた。

 順位を下げたとはいえ、LPGAツアーでは3戦連続予選通過となった渋野。テーマにしていた80~100ヤード以内のショットが何度もピンそばについたわけだから、明らかにゴルフは上向きな状態になっている。そろそろ目標を予選通過から優勝争いに切り替えたほうが、パッティングでも割り切って打てるのではないだろうか。

文●山西英希
著者プロフィール/平成元年、出版社に入社し、ゴルフ雑誌編集部所属となる。主にレッスン、観戦記などのトーナメントの取材を担当。2000年に独立し、米PGAツアー、2007年から再び国内男子、女子ツアーを中心に取材する。現在はゴルフ雑誌、ネットを中心に寄稿する。