ゴルフ

驚異のパーオン率を誇る“狭間の世代”の稲見萌寧。全英帰国後の“落とし穴“を乗り越えて歓喜の2勝目

山西英希

2020.10.11

ツアー2勝目を挙げた稲見。プレーオフでの強気な姿勢が勝利を呼び込んだ。(C)Getty Images

 台風の影響によるコースコンディション不良のため2日目が中止となり、36ホールの短期決戦となった国内女子ツアーの『スタンレーレディスゴルフトーナメント』。最終日は7人が首位に並ぶ大混戦からスタートすると、通算5アンダーでホールアウトした稲見萌寧、淺井咲希、ペソンウの3人によるプレーオフに持ち込まれた。プレーオフ1ホール目で稲見がただ一人バーディを奪い、今季初勝利、ツアー通算2勝目を挙げた。

 15番パー4でこの日3つ目のバーディを奪った時点では、まだ首位の淺井に2打及ばなかった稲見。しかし、残り全ホールでバーディを狙いにいくという強い気持ちが17、18番での連続バーディを呼び込んだのか、ついに淺井をとらえた。特に最終18番パー5では、3打目があわやカップインするかと思うスーパーショットで、ピンそば70センチにピタリとつけた。

 プレーオフに入ると、稲見の闘争心はさらにヒートアップする。「プレーオフの相手は誰だろうと関係ない。絶対に勝つという強い気持ちで臨もう」と決めていた。それがプレーにも表れる。「ビビッてミスするよりも、思い切りやってミスしたほうがいい」とばかりにドライバーをマン振りすると、2打目でも3番ウッドを気持ちよく振り抜いた。気がつけば、本戦より30ヤードもグリーンに近い残り86ヤード地点から3打目を打つことになった。
 
 上り傾斜になっているため、グリーン面は見えない。52度のウェッジで打った球はピンそばに落ちたものの、バックスピンが効いて4メートル手前のところまで戻ってしまう。しかし、それをきっちり沈めて、1回、2回、3回と右手の拳を振り下ろし、喜びを表現した稲見。初優勝よりも難しいといわれる2勝目を手にした。

 昨年、新人ながら賞金ランキング13位に入り、LPGA新人賞を獲得。今年はより一層の活躍が期待された。新型コロナの影響で調整が難しい中、打ち込みとショートゲームの練習に時間を費やし、順調な仕上がりを見せていた。ようやく6月に開幕したと思いきや、急きょ出場権が繰り下がってきた『AIG女子オープン』に出場することを決意。国内ツアーを3試合欠場することになるが、メジャーに出場する機会を逃すべきではないと判断した。