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「人種差別の偏見が決め手に…」孫楊への8年間資格停止が無効となった“舞台裏”を米紙が暴露!

THE DIGEST編集部

2020.12.25

以前にもドーピング違反の前歴がある孫楊。もはやクリーンなイメージを取り戻すのは難しいが……。(C)Getty Images

以前にもドーピング違反の前歴がある孫楊。もはやクリーンなイメージを取り戻すのは難しいが……。(C)Getty Images

 五輪で3つの金メダルを獲得した中国競泳界のスーパースター、孫楊を巡る大騒動が新たな局面を迎えた。
【画像】世界選手権優勝の孫楊が記念撮影を拒否した選手を恫喝! その決定的写真はこちら!

 現地12月24日、スイス連邦最高裁判所はドーピング違反によってCAS(スポーツ仲裁裁判所)から8年間の資格停止処分を受けていた孫楊に対して、裁定の無効を発表した。CASによる一連の調査と聴聞会において「偏見」が存在したと断じ、「CASは異なる責任者とメンバー構成で審理を再度実施しなければいけない」と通達したのである。

 まさかの展開に世界中が驚かされたが、その舞台裏を明かしたのが米紙『ニューヨーク・タイムズ』だ。スイス最高裁が指摘したところの「偏見」について追及し、具体的な当事者の名を上げてレポートしている。

 同紙によれば、孫楊の弁護団はスイス最高裁に提出した上訴文のなかでCAS聴聞会のリーダーに「人種差別的な思想があった」と告発したという。会を取り仕切ったのは、イタリアの元外務大臣である63歳のフランコ・フラッティーニ氏。弁護団はフラッティーニ氏がことあるごとにツイッターなどで中国を攻撃してきた証拠を集め、完全なアンチである点を訴えた。とりわけ中国国内で行なわれている動物虐待の実態などを徹底的に糾弾しており、聴聞会の以前から中国蔑視のスタンスが明白だったと見ている。

『ニューヨーク・タイムズ』紙はこれこそが審理に公平性を欠いた原因で、スイス最高裁が問題視した点だと記している。「加えて、聴聞会は英語のできない孫楊に不利な状況だった」と論じ、「フラッティーニ氏を含む3人の審査メンバーはすべて欧州出身で、中国語を理解できる者がいなかった。翻訳の拙さも顕著で、公平だったとは言えない」と説明している。

 先日、ロシア選手団のドーピングを巡る裁定で、WADA(世界アンチドーピング機構)が裁可した4年間の国際大会出場禁止に対して、CASは2年間の減刑とした。いずれにせよ国としての東京五輪エントリーは除外されたのだが、このジャッジについても審理上の謎が多い。同紙は「水曜日の(孫楊問題への)無効判決を受けて、CASという組織の審理能力に新たな疑念が生まれた」と指摘している。

 いずれにせよ、CASは新たなリーダーの下で聴聞会をやり直さなければならなくなった。孫楊の東京五輪出場への可能性は残されたが、あくまでも「無効」であって「無実」となったわけではない。まだまだ今後の展開を注視する必要があるだろう。

【孫楊のドーピング違反疑惑とは──】
 2018年9月、中国・杭州の孫楊の別荘で実施された抜き打ちドーピング検査が発端だ。選手側がいったんは検査に応じたものの、やりとりのなかで検査官の資格と正当性に疑いを持つに至り、孫楊の側近が採取した血液検体の容器をハンマーで破壊。WADAはこれを重大な妨害行為と重く受け止め、CASに告発。何度かの事情聴取と公開聴聞会を経て、今年2月に孫楊は8年間の資格停止処分を言い渡された。すぐさま孫楊側は認められていたスイス最高裁への上訴に踏み切る。裁定が覆る可能性はきわめて低いと考えられていたが、新型コロナウイルスの影響下で滞っていた審理が再開され、今週水曜日に「無効」のどんでん返しが起きたのである。

構成●THE DIGEST編集部

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