ゴルフ

原英莉花の快進撃を支えた“3本のウェッジ“。師匠ジャンボが「どれ、ちょっと貸してみろ」とヘッドを削ってアドバイスも

山西英希

2020.12.29

「アプローチに関しては、ウェッジが合い始めたのが私にとっては大きい」と原自身も手応えを感じている。(C)Getty Images

『日本女子オープン』と『JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ』を制し、賞金ランキング3位(7072万2208円)で20年を終えた原英莉花。14試合の出場ながら、36試合出場した19年(7076万9927円)と獲得賞金額はほぼ変わらない。大きく成長した1年となったが、それを支えたものの一つが、現在使用している3本のウェッジだ。ミズノオリジナルのプロトタイプで、ロフトは48、52、58度となっている。

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 原といえばジャンボ尾崎の愛弟子として知られているが、15歳で入門した当初、ドライバーショットには光るものがあったものの、アプローチに関しては下手だと言われていた。バリエーションが少なく、ポンと上げるようなアプローチしか打てなかったという。そんな原にジャンボが与えたのが、マスダゴルフM425のウェッジだった。52度と58・5度の2本を渡されると同時に、低く打ち出してスピンが効く打ち方も教わり、少しずつ原のアプローチは上達していった。
 
 ジャンボのウェッジといえば、88年にブリヂストンから発売されたJumboMTNⅢプロモデルを思い浮かべる人もいるだろう。当時国内ツアーで最強だったジャンボが使用していることもあったが、グースネックのウェッジはアベレージゴルファーにも人気で大ヒット商品となっていた。M425は明らかにその流れを汲んでおり、しっかりとグースが入っていた。グースネックとはシャフトに対してリーディングエッジが少し後方にくるネック形状のことをいう。

 プロに転向してからも同タイプのウェッジを使い続けていた原だが、これを黙って見ているわけにいかなかったのが、用品契約を結んでいるミズノだ。何としてでも原に使ってもらおうと、19年から原に合わせたウェッジ作りを始める。M425を参考にデザインされたが、出来上がってみるとフィーリングが明らかに違っていた。同社ではグースネックのウェッジをあまり製作していなかったこともあり、何度も試行錯誤を繰り返したが、満足のいく仕上がりにはならなかった。そんなやりとりを横目に見ていたジャンボが、つい重い腰を上げる。「どれ、ちょっと貸してみろ」と、自らヘッドを削り始め、アドバイスをするようになったのだ。