フィギュア

全日本で紀平梨花が示した“ロシア勢と渡り合える可能性”。4回転サルコーを支えたフィジカル、メンタルの進化

矢内由美子

2020.12.31

日本女子シニア初の4回転サルコーを成功させ、全日本連覇を果たした紀平。写真:森田直樹/アフロスポーツ

 この大会が自身にとって今季初戦という異例の状況でありながら、終わってみれば必然ともいえる大会連覇。全日本フィギュアスケート選手権女子シングルの紀平梨花(トヨタ自動車)が見せたパフォーマンスには、有形無形のインパクトがあった。

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 結果をおさらいすると、ショートプログラム(SP)は1位の79・34点、フリーも1位の154・90点。合計234・24点での2連覇達成だ。

『ザ・ファイア・ウィズイン』の情熱的な音楽に乗ってしなやかな強さを感じさせたSP。転じてフリーでは『Baby, God Bless You』の柔らかなピアノの音色をまといながら、息もつけないような密度の濃い演技を披露した。

「SPではノーミスをすることができて、フリーでは決めたいと思っていた4回転サルコーを決めることができた。去年は1週間前に靴を換えて跳び方が定着しないまま試合に出たが、今回はあの瞬間に調子を持って行けたのが一番」と、自らの成長を言葉に置き換えた。

 今大会の紀平の演技で最大のトピックはやはり、「4回転サルコー」の成功だ。ISU非公認ではあるが、日本女子シニアでは初。フリーの冒頭にこのジャンプを組み込んだ紀平は、正確な予備動作からジャストなタイミングで踏み切り、高速回転の中でも軸をぶれさせることなくきっちりと4回転して降りた。ジャンプの高さや幅、ランディング後の流れも申し分なく、出来栄え評価(GOE)は3・19点がついた。
 
 4回転サルコー成功のベースにあるのはフィジカルの向上だ。紀平は今季から練習拠点をスイスに移し、ステファン・ランビエルコーチの下で宇野昌磨や島田高志郎らとともに、毎日の氷上練習に加えて週4回の陸上トレーニングを敢行。走り込みや筋トレで脚力が増し、ジャンプが一段と高くなったという。

 さらにはコロナ禍により、メンタルも否応なしに鍛えられた。出場予定だったGPシリーズのフランス杯が中止になり、試合でしか味わえない緊張感や達成感を得ることができない、もどかしい日々。「自分が成長しているのか、下がっているのかもわからず、つらかった。でも1年間あきらめずにコツコツやってきて良かった」。紀平の言葉には、18歳が伸び盛りの年齢であることを改めて思い出させる響きがある。